⑤実際に生活保護を受けた話、その一部始終【稼働指導と通院】

これは私の知人が生活保護を受けたときの一部始終です。

詳細が分かるように若干のフィクションを加え、物語形式にしてみました。

今回は、文書指導と通院です。働くことができるのに働かないので文書指導で保護の停止、廃止があると伝えられます。

求職状況

あれからも職安には行っていない。

今迄、適当に書いて出していた求職状況の報告書も最近は面倒になって提出していない。

先日の家庭訪問では「このままきちんと求職しなければ文書指示をします。それに従わなければ保護の停止、廃止となる場合もあります。」なんて言っていた。

生活保護が廃止になったら当然困る。

と言って、求職をするのも嫌だ。別に働く気がないわけではない。仕事があるならいくらでも働く。仕事がないから働いていないだけだ。ケースワーカーが仕事を持って来れば良いのに、働け働けというだけで一向に何もしやしない。俺が働かないのはそうしたケースワーカーのせいだ。

お前らは働けというだけで楽で良い。求職するこっちの身にもなってくれ。

生活保護を受ける身にもなってみろ。

で、生活保護は最低限の生活を保護する国民の権利のはずだ。生活保護を廃止するということはその国民の権利を奪うことになるが、ケースワーカーの一存でこの権利は奪われることになるのか。

正直、最近はどうもやる気がしない。外に出るのは買い物とパチンコだけだ。人にも会いたくない。こんな姿を見られるのも嫌だ。

日中は殆ど寝て過ごしている。

そういえば、ケースワーカーに話をしたら病院へ行ってみるように言われた。精神的に落ち込んでいるのではとまで言っていた。

自分としては、病気のつもりはない。医学的にみて病気なのかそうでないのかは、医者じゃないので分からない。元気が出ない、やる気が出ないというのは事実だ。

病院なんかはずっと行っていない。風邪ぐらいなら家でじっとしていれば治るので行くことはない。第一、病院なんかへ行くと金がかかってしょうがない。ところが生活保護を受けると病院代はタダになるらしい。

と考えると、どうせ暇だし、通院してみるかという気になった。

 

精神科への通院

精神科となれば本当に敷居が高い。子どものとき、「精神病院から黄色い車が迎えに来て強制的に入院させられる。」ということを聞いて怖がった記憶がある。いつそんな車が迎えにくるかと真面目に思っていた。

そんな精神病院に行くのかと思った。

A病院にすることにした。

精神病院に限らず、通院するときは前もってケースワーカーに連絡を入れなくてはならないと言われていたので電話した。

病院の窓口では通常保険証を提示するが、保護を受けている者には保険証はない。だから、窓口で保護を受けていることを言わなくてはならないらしいがどうも言いにくい。

生活保護を受けているとはどうしても言えなかったので「生活保護を利用しています。」と窓口で言った。「利用」と「受けている」とでは受ける印象が違うかどうかなんてわからないが口をついて出てきたのがこの「利用」だった。

ケースワーカーから連絡が入っていたのだろう。スムーズに通院カードを作ってくれた。

後は、普通の病院のとおり、待合室で待っていて名前を呼ばれた。

医者の診察があるのかと思っていたら違った。看護師か何かは分からないが、成育歴とか今の状況、調子、来院目的などを聞かれた。

それから、医者の診察に入った。医者は、もう60歳を超えているだろうと思うお爺さん。
事前に話をしているので、ここではそれほどの話はない。こちらの調子が悪い状況を説明して終わった。

「うつ状態」との診断だった。いったい、うつ状態とは、うつ病のことなのかどうかは分からないが兎も角、病名が付いたようだ。
薬も出た。SSRIと呼ばれるものらしい。

解説

飲野さんは稼働指導に従っていません。何やら責任転嫁まで始めています。ケースワーカーはこのままでは文書指導をしてそれにも従わない場合は生活保護の停止、廃止をすることになります。

当然と思います。

生活保護は働ける人は働かなくてはなりません。このことは、働けない人に対してまで働けとはならないことを意味します。

そうした意味で、飲野さんの元気が出ない、やる気が出ないという部分でケースワーカーは病気を疑い、通院を勧めたものです。

このように通院して本人の状況を客観的に確認する作業は重要な意味を持ちます。

今後のケースワークの基礎となるものです。これで病状把握をして稼動ができないような病状なら、稼働指導はすることはできません。