これは私の知人が生活保護を受けたときの一部始終です。
今回は、ケースワーカーの家庭訪問と稼動指導です。働ける飲野さんには当然のことながら働くよう指導を受けます。
目次
今日、ケースワーカーが来た。家庭訪問ということである
家庭訪問なんて中学のときに担任が来たとき以来だ。何やら毎月来るらしい。お金だけもらえれば良いのでそんなに来ないでほしい。
主な話は求職活動はどうなっているかということだった。
正直、生活保護を受けてから、職探しには行っていない。保護費が入るのでお金には困っていないからだ。
お金に困っていないというのはおかしな話だ。困っているので保護を受けているのではないかと一瞬思ったが、現実、困っていないものは困っていない。もらえる保護費も自分には十分な額だ。
実際には職探しなどはしていないが、何もしていないと言うのも気が引けた。だから、「友人に聞いたりしています。」と答えた。
すると、「定期的に求職状況の報告を指導しているがなぜ、報告がないのか」と畳みかけてきた。
そういえば、最初にお金をもらうときにそんなようなことを言っていたような気がするが、あのときは兎も角、お金のことしか頭になかったので、何でも「はい、はい」と答えていた。今思い出した。
言い方が気に食わなかった。
「だから、友達に相談している。その報告なら今する。」とむっとなって答えた。
「2週間ごとにこの報告書を提出するように」と用紙を置いていった。
稼動指導と求職状況
ケースワーカーが来て以来、どうも何事にも面倒になった。ケースワーカーがその原因というわけではないが、そう思うことで求職活動をしない言い訳になるような気がした。
その後、求職状況報告書には適当に記載して報告するようにした。
ケースワーカーは本当に毎月来た。知り合いのところには3、4か月毎なのに自分のところだけは毎月来るというのも気に食わない。
気に食わないと言えば、ケースワーカーが言うことが毎回、同じなことも気に食わない。
「求職をきちんとして、働けるなら働くように」としか言わない。
ケースワーカーが言うことは理屈では分かる。頭では分かるが、何度も職安に通って、面接に落ちた身としては、釈然としないものがある。
今迄の職歴は事務しかない。
職安の担当者は、「最近は景気が良くて求人が多いと言われているが、それは現業の話。事務仕事の倍率は高いと言っている。」事務はそれこそ若い女性なら兎も角、こんな齢のおじさんなんか採用しないらしい。そうした状況にあるのに、早く働けとは何事かと思う。
肉体労働なんて不可能だし、車の免許こそあるが、運転なんて1日中したくはない。仕事の選り好みをしていると言われても、できもしない仕事、やりたくない仕事なんかしたくない。
俺が高校生の頃、肉屋の配達のアルバイトをした。そのとき、50歳近いオジサンがいた。俺と同じアルバイトだ。何で、こんなオジサンがアルバイトをしているんだと思った。
職員同士の話で、「あのオジサンは親の遺産があって、食べるには困らない。」と言っていたが、実際にはどうだったのか。あのときは、お金があれば、事業か何かをしてこんなアルバイトなんか普通はしないだろう、職員の言っている話は本当だろうかと思っていた。
今の自分と同じように生活保護を受けて生活していたのではないか。そして、今の自分が当時のオジサンと同じということには愕然とした。あんなように汚い恰好で、同じように蔑まされて見られているのかと思った。
そうは思っても頑張ろうという気はなかった。
解説
あれれ、飲野さんは、適当に求職状況の報告をして、どうも真面目に求職活動を行っていないようです。
このようなことでは生活保護は受けてはいけません。内心どのように思っていようとも、生活保護は働ける人は必ず働かなくてはなりません。
ただ、飲野さんに同情しなくてはならないのは事務職しか経験がなくてどうしても求職の幅は狭められてしまうということです。ただ、だからといって求職活動を行わない理由とはなり得ません。
また、生活保護のケースワーカーはその対象者によって訪問頻度は変わります。飲野さんのように働けるのに働いていない人には毎月訪問して重点的な指導が行われます。