安倍首相のマスク2枚配布への批判は的を射てない7つの理由

安倍首相の「1世帯あたりマスク2枚を配布する」とした施策は本当にそんなに批判を浴びる内容なのか。

新型コロナウイルスの感染が国内で拡大し、医療崩壊を懸念する声が強まる中、安倍晋三首相が41日、新型コロナウイルス特措法に基づく政府対策本部で、緊急経済対策の一環として1世帯あたりマスク2枚を配布すると表明した。 

安倍首相は布マスクの配布は、「急激に拡大しているマスク需要に対応する上で極めて有効」と強調した。 

しかし各世帯にマスク2枚を配布するとした安倍首相の発表については、批判が噴出している。 

以下、この批判が的を得ていないことを指摘していく。なお、断っておくが私は現政権のシンパではない。あまりにもマスク配布に対して感情的になっているので、そうした意見だけではないという私の素直な考えを記すに過ぎない。

 安倍政権マスク配布に対する批判の内容はどのようなものか

 批判の内容は「Asagei Biz」で詳しくまとめられている。若干引用したい。

尾木ママこと教育評論家の尾木直樹氏は1日、自身のブログで「何を考えておられるのでしょうか? 今はそんなレベルの話じゃないでしょう」と呆れ、落語家の立川志らくは「グッとラック!」(TBS系)で「最初にお金でマスクは後」と、順番が違うと批判し、続けて「B29が飛んできたのに竹槍で戦う発想に見えちゃう」と例えた。  

作家の室井佑月氏は2日に放送された「ひるおび!」(TBS系)で「どうして現金を給付できないんだろう? 本当にケチくさい政権」とこき下ろし、俳優・高橋克実も2日の「直撃LIVE グッディ!」(フジテレビ系)で、「これ、送る必要あるのか…こういうことを先にやることなのか、もっと先にやることがあるんじゃないのか」と疑問を投げかけた。 

また、小説家の百田尚樹氏は1日、自身のツイッターを更新し、「一つの家庭に2枚の布マスク? なんやねん、それ。大臣が勢揃いして決めたのがそれかい! アホの集まりか。全世帯に郵便で2枚のマスクを配るって…」と激しく怒り、「これ、エイプリルフールのつもりか。もしかして全閣僚が集まって考えついたウソか?」と厳しく言い放った。 

鳩山由紀夫元首相は2日にツイッターを更新し、「昨日はエイプリルフール。でも直前に志村けんさんが亡くなるショックで今年はそれどころではないと思っていた矢先に、安倍首相が布マスクを全世帯に2枚配布しますと決めたとのこと」とし、マスク配布はエイプリルフールのジョークと受け止め「なかなかやるなぁと思っていたら、本当になさるようだ。今どきなぜ世帯に2枚? 早急にやって欲しいのは減税なのに」と皮肉った。

 残念ながら論客の皆さんは感情を爆発させただけという感が否定できない。これだけの分量で書かれている批判だが、その内容をまとめると 

1 他に先にやる施策があるのではないか(今はお金の給付が先、今は減税が先、順番が違う。)
2 なぜ1世帯に2枚の配布か 

この2点しかない。

巷で言われている批判についてはこの他に、布マスクの効果はないのになぜ配るのかといったことぐらいだ。 

「他に先にやる施策があるのではないか」については百田氏は自身のブログで「緊急事態宣言とか、消費税ゼロとか、金を配るとか、パチンコ店禁止とか、エイヤッ!とやることあるやろ」と述べている。他、同意見としては「マスク二枚でごまかすな」というものもある。

マスク2枚の配布批判が的を得ていない理由

 批判を批判するために批判の内容を更に次の点に絞って論じたい。 

1 他に先にやる施策があるのではないか

  • 今はお金の給付が先
  • 今は減税が先
  • 今は緊急事態宣言が先
  • 今はパチンコ店禁止が先
  • (他の優先する施策を行わず)マスク二枚でごまかすな

 2 なぜ1世帯に2枚の配布か

 3 布マスクの効果はないのになぜ配るのか

 「今はお金の給付が先」について

確かにコロナウィルスで主に飲食業、旅行業などは大痛手を被っている。株価も急下降で経済は本当にずたずたになっている。金銭給付が先という意見もうなずける。ただ、安倍晋三首相はほとんど同時に収入が減少した世帯に30万円の給付を行うと言っており、決して金銭給付の代わりがマスク配布ではない。同時に進められている施策なので「今はお金の給付が先」という批判は誤っている。 

「今は緊急事態宣言が先」について

緊急事態宣言がすぐに必要とする小池東京都知事の意見があるようにそう考える者も多い。確かに緊急事態宣言を行うことで国民の意識も高くなるだろう。ただ、緊急事態宣言については政権内で当然議論をしていることであり、その結果、緊急事態宣言を行っても外出自粛は要請に止まり、現状と変わらないことやパニックが生ずる可能性を考え出していないに過ぎない。緊急事態宣言を行わなかったからと言ってマスク2枚の批判になるとは思えない。

「今は減税が先」について

減税をしてほしいという意見を持った者はそう考えるかもしれないが、これも政権内で議論のうえ却下された内容だ。確かに昨年10月に増税した矢先の出来事なので減税をしてもらいたいというのは分かるが、国の収入を考えるとそうとばかりは言っていられない。30万円の支出を行う以上財源が必要なのは明らかだ。政権で減税はどうしてもできないと判断したものだが、その代わりにマスクを配布したというわけではない。マスクを配布しなくとも減税はできないということだ。

「今はパチンコ店禁止が先」について

確かに飲食店などへの自粛は言われているがパチンコ店と限定しての言及はない。一説ではパチンコ業界からのお金が政権に動いているので言及しないのではないかと言われているが、そうではないだろう。パチンコ店とピンポイントで業種を指定して言うことが良いことかどうか考えてほしい。それを言ってしまうと、ビリヤードや競艇、競馬など自粛を促すのに全て業種を指定しなくてはならなくなってしまう。業種を指定せずに「外出自粛」のひとことで済む話であるしそうした方が効果が高い。

「マスク二枚でごまかすな」について

ごまかしているのではなくて、現時点でできる施策を最大限に行おうという姿勢である。 

「なぜ1世帯に2枚の配布か」について

 菅義偉官房長官:「費用については1200円程度と聞いております。」マスク1枚が200円と計算すると、2枚で400円。5000万世帯分で約200億円。さらに5000万世帯分の送料がかかる可能性があります。 

なぜ2枚か。それはお金がかかることと、迅速性を優先したことに他ならない。枚数だけを問題にするなら、すぐにできてお金がかからないなら当然もっと配布するだろうが、費用の問題と時間の問題で2枚となっているのだ。日本の平均世帯人数は2.47人ということもある。

3人以上の世帯では誰がつけるかで争いが生じるという意見もあるが、これは何枚の配布でも同じだ。例えば10枚を配布したとしても「どのように分ければ良いのか」と文句を言う輩は必ず出てくる。今までなかったマスクなのだから、家庭内できちんと話し合うべきものだ。 

布マスクの効果はないのになぜ配るのか

マスクの効果については色んな説がある。今回のマスク2枚配布に関して新たに出てきた論点ではない。

そもそもマスクの効果はどうなのか。WHOでは予防のためにマスクを付ける必要はないとまで言い切っている。

とは言っても我々はマスクを必要としている。マスクは必要と思うからこそ店頭に並んでいるのだ。今更、効果どうのこうのといっている次元ではない。

 それでは、マスクの効果は認めるとしても布マスクでは効果が薄いのではないかというだろうが、確かにそうであろう。でも、今、不織布マスクが手に入らないときに布マスクではダメなのだろうか。マスクをしないよりも良いのではないか。少なくともガーゼで自作するよりは専門業者が作った布マスクの方が効果が高いのは間違いない。

 また、マスクの最大の効果は移さないことにある。予防のためにはマスクの効果は少ないとしても他人に移さない効果は十分にある。これはWHOも認めていることだ。付けている本人は予防のつもりでマスクをしていたとしても症状が出ていないだけでコロナウィルスに罹患している可能性もあることを考えると布マスクでも付ける意味は十分にあるということだ。

 マスク配布は政府の配慮

マスクが不足している。国民はこぞってマスクを求めて店を回り、苦労をしている。こうした状況を何とかするべく政府もマスク増産に対する補助金を交付するなどしたが需要には追い付いていない。

 なぜこうもマスクが不足してしまったのだろうか。それは不織布のマスクが使い捨てだからだ。月に7億枚まで増産すると行っても、国民が1日1枚使うとすると月に30億枚が必要となる。とても7億枚では足りるものではない。マスクが不足するのは当たり前だ。

 これに対して安倍政権が打ち出したのが布マスクの配布。これにより逼迫しているマスクの需要を抑える一定の効果を期待してのことだ。

 私はその効果は十分にあると思っている。政権は何をしても批判の的となる。民主主義で、ものを言えることは本当に大事なことだ。しかし、今回のマスク批判については当たらない。

 国民のマスクを求めて彷徨い歩いている姿を何とかしたいとの優しい思いが布マスクの配布となったと素直に喜びたい。