仕事が辛い時こそ知っておきたい、退職や休職という選択肢 ・ 仕事ができない辛い状況から抜け出すために、甘えではなく自分を守る勇気を持とう、努力だけでは解決しない現実と向き合う

家を出れば7人の敵。7人どころではないかもしれない。働くことは本当に大変なことだ。

何が大変かと言えば、逃げ場がないことだ。仕事が辛いと感じても、大変でも嫌でも毎日職場へ行って働かないとならない。仕事が辛い時でも、嫌だからと言って休む訳には行かない。

本当に嫌ならその職場で働かなければ良いだけのはずだが、もしもその職場から出てしまうと、今度はたちどころに生活ができなくなってしまう。いるも地獄、去るも地獄なのだ。

仕事を辞めたいと思う気持ちと再就職の現実

一般に勤めていた企業規模が大きくなればなるほど、辞めた後の再就職は困難を伴う。なぜ仕事退職したかを聞かれ、どうせまたすぐに辞めるのではないかと思われてしまうからだ。仮に再就職できたとしても今よりも悪い条件となることは必至である。

仕事辞めたいと思っても、すぐに行動に移せないのは、こうした現実があるからだ。特に大企業に勤めている場合、その傾向は強くなる。

ただ、大企業なら、福利厚生が充実して休職のシステムが構築されていることが多いというメリットはある。仕事が辛い状況が続く時、こうした制度を活用することは決して恥ずかしいことではない。

反面、企業規模が小さくなって来ると、辞めても同規模の企業に就職できる可能性は高いからあまり辞めることのリスクは負わなくて済む。人事異動のように定期的に辞めては再就職を繰り返す者も多い。

このためどちらかと言えば企業規模が大きければ大きいほど逃げ場がなくなる。仕事ができない辛い状況に陥った時、大企業ほど身動きが取れなくなるのは皮肉な現実だ。

自殺した職員 ・ 限界を超える前に

交通事故がなくならないように、一定の割合で自殺する者が出るのはこの世の常だ。企業規模が大きければ年に何人かは自殺する。それは統計学的にもそうなる事実である。

風のうわさで聞く場合もあるが私の場合は直属の部下が自殺した。

彼は大変人が良くてNOと言えないような性格だった。仕事が辛い時、適切に断ることができる能力は生きていく上で非常に重要だ。仕事では理不尽なクレームにも耐えなくてはならない。否、耐えるのでなく、正当な主張をしなくてはならないのだ。無理難題に対して「はいそうですね」とは言ってはならないのだ。

彼はそれができなかった。反論ができなかった。言われたら固まってしまいひとことも発することができなかった。外からは見えないが、パニックになり頭も働かなくなってしまうようだった。

係員からも軽く扱われて何かあると係長のせいにされていた。全く働かない職員がいて、何とかしてくれと係長に詰め寄る者もいた。当然、上司である私にもそうした職員からのクレームは来るが私は逆に言い返すので、標的はその係長になった。

大人の世界での職場のいじめとはこういうことなのだろうか。いじめている側は正当な主張をしているとは思っているだろうが。

仕事のストレスが引き起こす悲劇

年に何回もクレームが来る職場、それも部下からクライアントからである。耐えられなくなったのであろう。ある日職場内で自殺した。職場内で自殺する者は仕事が自殺の原因と警察は言うが正にそのとおりだった。

鬱病になっていたのではないかと想像するが全くその兆候はなかった。鬱病者は朝が起きられなくて遅刻したり休みがちになったりするというがそうではない人もいるらしい。彼がそうだった。全く、休まず、遅れることすらなかった。私の目から見てもクレームに耐え良く頑張っていると見えた。もちろんそうした人だったから、私も気にかけて係長が対応できないだろうと思うときは率先して対応した。私としても十分フォローができていると思っていた。

しかし、仕事ができない辛いという自己評価や、周囲からのプレッシャーは、本人にしか分からない重圧となって積み重なっていたのだろう。真面目な人ほど、自分を追い込んでしまう傾向がある。

私が異動して少したった後であったので職場内がその後どういった状態になっていたかは分からないが大変だったと思う。

もう一人の同僚の悲劇

元の同僚も自殺した。彼は有名大学出身でプライドが高くいつも同僚を見下していたふしがある。何かにつけて回りと反発していた。私は彼がそうした行動をするのは彼の神経が繊細なためと思っていたがやはりそうであった。こうした人だからもちろん出世はしない。それどころか高卒出の上司から色々と言われることもあったらしく、大分溜まっていたらしい。ある日突然訃報が回ってきた。

上司への腹いせで切腹をした者もいると聞いたことがある。

## 死んでは、花実は咲かない

死ぬぐらいだったら何で助けを求めなかったのか。そう思うだろうが、私にはその係長の気持ちが良く分かる。逃げ場所がないのだ。

仕事が辛い状況が続き、精神的に追い詰められると、視野が狭くなり、他の選択肢が見えなくなってしまう。しかし、命を失ってしまっては、何も始まらない。死んで花実が咲くものかと言わざるを得ない。

どんなに仕事が辛い時でも、命より大切な仕事など存在しない。これは絶対的な真実だ。

## そのような人たちはどうすれば良かったのか

まず、開き直って逃げることだ。人間、ある程度は頑張る必要があるが、一定以上の頑張りは自滅行為だ。

大企業で働いている場合の対処法

大企業なら、病休や休職制度が整っている。体調が悪いと言って病院へ行くべきなのだ。仕事が辛いと感じたら、まずは医療機関を受診することが重要だ。心療内科や精神科を受診することに抵抗を感じる人もいるかもしれないが、心の健康も体の健康と同じように大切にすべきものだ。

診断書をもらって休職することは、決して逃げではない。自分の健康を守るための正当な権利だ。仕事退職を考える前に、まずは休職という選択肢を検討してほしい。休職期間中に心身を回復させ、その後の選択肢をゆっくり考えることができる。

中小企業で働いている場合の対処法

小企業なら失うものがないと考えてすぐに退職すべきだ。(決して小企業を卑下しているわけではない。事実としての対処法を述べているに過ぎない。)

仕事辞めたいという気持ちが強く、毎日が苦痛で仕方ないなら、思い切って環境を変えることも一つの解決策だ。中小企業の場合、転職のハードルは比較的低く、同規模の企業への再就職も十分可能だ。

相談できる相手を見つける重要性

家族や友人に相談ということもあるが、相談できるような精神状態ならそんなことにはならない。誰にも話せないから死を選ぶのだ。でも奥さんにだけは話してほしい。残された奥さんほど悲しい思いをするだろうから。死んだこともそうだが、自分に何も話してくれなかったことこそ悲しいだろう。

仕事が辛い時、パートナーや家族に相談することは、決して弱さの表れではない。むしろ、信頼できる人に自分の状況を伝えることは、問題解決への第一歩となる。

もし家族に話すことが難しければ、社外の相談窓口や、労働相談センター、心の健康相談窓口などを利用することもできる。一人で抱え込まないことが何より大切だ。

他人の目を気にしすぎない強さを持つ

他人から何と思われても良いという思い、他人のことは屁とも思わない精神力、鈍感力を持たないとならないが、そう思って持てるほど簡単なものではない。

しかし、少しずつでも「自分の人生は自分のもの」という意識を持つことが大切だ。周囲の評価や期待に応えようと無理をし続けることは、結局自分を壊してしまう。

逃げることは負けではない

兎も角、逃げに逃げること。逃げるが勝ちなのである。後はどうとでもなる。

仕事辞めたいと思ったら、それを実行に移すことは決して恥ずかしいことではない。自分の心と体を守るために、環境から離れることは、賢明な判断だ。

新しい環境で再スタートを切ることもできるし、しばらく休んで充電することもできる。人生は長い。一つの職場、一つの仕事がすべてではない。

まとめ ・ 命より大切な仕事はない

仕事が辛い時、我慢し続けることが美徳だと思われがちだが、それは間違いだ。限界を超えて頑張り続けることは、自分を壊すだけでなく、周囲の人たちをも傷つけることになる。

仕事ができない辛いと感じることは、決して恥ずかしいことではない。人にはそれぞれ得意不得意があり、環境との相性もある。合わない環境で無理をし続けるよりも、自分に合った場所を探す方が、長期的には自分にとっても社会にとっても有益だ。

仕事退職や休職を検討することは、逃げでも甘えでもない。自分の人生を大切にするための、勇気ある決断だ。どうか、追い詰められる前に、助けを求めてほしい。あなたの命は、どんな仕事よりも価値があるのだから。