美味しい焼き芋を焼く方法という情報はいくらでもあるが、その通りに焼いても必ずしも美味しい焼き芋ができるわけではない。このため、筆者は美味しい焼き芋を探し求めて、大量にサツマイモを購入し何度も試行錯誤を行った。
その結果を元に美味しい焼き芋を食べるためにはどうすれば良いか考察を行った。
目次
低温でじっくり焼くと焼き芋は果たして本当に美味しくなるのか
どこでも「低温でじっくり焼く」と美味しくなるという。糊化したデンプンはアミラーゼにより麦芽糖に変わり甘い焼き芋となる。糊化させるために、また、アミラーゼを活性化させるために70~80度の温度で焼く。この温度帯をできるだけ長時間キープすると甘い焼き芋となるというものだ。
これが焼き芋を美味しく焼く理屈だ。この理屈を具現化するために、さまざまな焼き方が紹介されている。
この焼き方に何度もチャレンジしてみたところ、確かに一定の成果が見られた。長時間こうした温度帯で焼いた焼き芋と短時間で焼いた焼き芋を比べると確かに時間をかけた方がおいしい。
巷では、このように焼き方で、とってもとっても甘く美味しい焼き芋に仕上がるという情報だらけだが、必ずしもいつも美味しい焼き芋が出来るわけではない。
はっきり言って、まずい芋はいくら焼き方を工夫してもまずいままなのだ。
焼き方で一定の成果が見られたと言ったばかりではないかとお叱りを受けるかもしれないが、筆者は焼き方を工夫すると一定の成果があると言ったまでで、どんなサツマイモでも目玉が飛び出るほど美味くなるとは言っていない。
どんなサツマイモでも焼き方により一定の成果があるということに留まる。
つまり、まずいサツマイモは、まずいままだが焼き方でまずさがいくぶんかは軽減されるということだ。少なくとも美味くはならないということだ。
焼き方だけが全てではない。
美味しい焼き芋には美味しいサツマイモを入手することが大事
筆者はもともと焼き芋が大好きなので、今まで多くのサツマイモを焼いてきた。特に研究をせずに焼いていた頃でも美味しい焼き芋を焼くことができたときもあった。
1キロ200円ぐらいで投げ売りしているクズイモでさえ、とっても甘く美味しいときがあった。
そう、つまりは、元が美味しいサツマイモは美味しい焼き芋に仕上がるという話だ。美味しいサツマイモは美味しいし、美味しくないサツマイモは美味しくないという単純な話なのである。
美味しくないサツマイモはいくら焼き方を工夫しても美味しくない。逆に、美味しいサツマイモは特に焼き方を工夫しなくとも美味しいのだ。
つまりは、美味しい焼き芋を食べたいなら、いかにして美味しいサツマイモを手に入れるかにかかっている。
筆者は、美味しい焼き芋の情報を収集していたとき、その情報の全てが焼き方さえ工夫すれば美味しくなるように言及しているが、そんな単純な話ではないということだ。
そうした情報は、「こうして美味しい焼き芋ができました。ハッピーハピー」ということだらけで、当然、工夫しても美味しくなかったなどというような情報はない。そもそも、美味しい焼き芋を求めているのに美味しくないなんていう情報は需要がない。そんな情報には辿り着くことは不可能だ。
だから、「焼き方さえ工夫すると美味しい焼き芋になる」という話ばかりが出てくることとなる。
この辺は、心して情報に接さないとならない。いくら焼き方を工夫してもクズイモが絶品には変わらないということを肝に銘じておかなくてはならない。
美味しいサツマイモの入手方法
それでは、美味しいサツマイモはどうやって入手すれば良いか。
色がよく、凸凹がなく、中型で、切り口が濃いものが美味しいと言われている。しかし、凸凹があっても小型でも大型でも美味しいものは美味しい。色の良し悪しなんて殆ど判別不可能だ。
どうも、見た目での判断は難しそうだ。唯一言えることは、蜜が滲み出ているサツマイモは美味しいということ。蜜は見た目で分かるので見分け方は簡単だ。
次は、ある程度高価なサツマイモは美味しいということだ。売り手も自分のサツマイモの状態や商品価値は熟知している。美味しいものは高く、美味しくないものは安くする。簡単な経済原理だ。だから、残念だがなるべく高いサツマイモを買うべきということ。
とは言っても安いサツマイモの全てが不味いというわけではないのは先述のとおり。
だから、当たり外れということにはなる。できるだけ高そうなサツマイモを買えば外れる確率は低くなるということに過ぎない。
美味しい焼き芋に品種は関係するか
紅はるか、紅あずま、安納芋、シルクスイートなどなど様々な品種がある。○×は、ねっとり系、メ◯は、ほっこり系とまことしやかに言われている。
でもこうした銘柄は焼き芋の美味しさには殆ど関係しない。紅はるかであっても不味い芋は不味いし、美味い芋は美味い。紅あずまにしても安納芋にしてもシルクスイートにしても同じだ。
銘柄ではなく、どのように育てられたかが重要だ。美味しい芋に育てられたか、不味い芋に育てられたかだ。
家庭でサツマイモを焼くときに犯している過ち
さて、こうして美味しそうなサツマイモを手にすることができたら。次は、焼き方だ。焼き方が全てではないと先述したが重要なことは確かだ。
家庭での焼き方の間違いがひとつある。「焼き鳥の串を刺して、通るかどうかを確認して通るならOK、火を止める」という情報は聞いたことはないだろうか。実は、これは間違いだ。火が通ってサツマイモが焼けたらそれでOKではない。この状態のサツマイモは焼き芋として食べることができるというだけで、これだけでは美味しい焼き芋とはなっていない。
美味しい焼き芋にする焼き方は、まず、でんぷんを糊化することが大事で、糊化とはサツマイモが柔らかくなっている状態のこと。串を刺して通る状態になったということは、でんぷんが糊化された状態にはあるということだけだ。
サツマイモが柔らかくなったばかりでは糊化したということだけで、まだ麦芽糖にはなっていない。
次はアミラーゼで糊化したでんぷんを麦芽糖に変えなくてはならない。だから、ここから麦芽糖を生成するために更にじっくりと焼かなくてはならないのだ。
低温でじっくり焼く方法
家庭で簡単に美味しい焼き芋を作る王道はオーブンだ。オーブンで長時間焼けば美味しくなる。設定時間、設定温度は様々なレパートリーがある。オーブンの能力、サツマイモの個数により適温や時間が異なる。焼き方の様々な情報の違いはこれらレパートリーの違いにしか過こない。
70~80度が適温と言われているが、だからといってオーブンの設定温度を70~80度にしてはいけない。これでは低温過ぎる。筆者もはじめはこの温度帯の設定が良いのではないかと誤解していたが、適温はサツマイモの芯温なので、芯温がこの温度帯にするためにはオーブンの温度は100度以上にしておかなくてはならない。
なぜなら、気化熱でサツマイモの水分が熱を奪うからだ。150度~230度当たりで適温を見つけることとなる。また、時間も「できるだけ長く」が定石だろうが、だからと言って何十時間もというわけではない。1~3時間あたりで、これ以上時間をかけても効果がないというまでオーブンにかけることとなる。
もうひとつやっていることは、サツマイモの両端を切ること。アルミフォイルはこの部分には巻かずに加熱すること。これにより、中の水分が抜けて甘みが凝縮されることになる。
水分が抜けたかどうかは、皮と身の間に隙間があるかどうかで判断することができるので、なるべく隙間があくように焼くことが重要だ。
焼き芋屋の焼き芋はなぜ美味しいのか
焼き芋屋の焼き芋は美味しい。それはなぜか。それはプロだからだと言っても答にならない。上記で美味しい焼き芋にするためには、1.美味しい焼き芋を入手する、2.低温でじっくりと焼く、という二つを紹介したが、プロの焼き芋屋が美味しいのはこのふたつを同時に実現しているからだ。
まず、焼き芋の入手方法が我々一般人とは異なる。プロは、先ずは市場から仕入れている。もしくは、近郊農家からである。当然、売り手とは様々な情報交換を行い、互いの信頼の元に売買しているので、おかしなサツマイモには当たらない。もしも不味いサツマイモを買わされたなら契約を切るだけだからだ。大量買いの大きなメリットだ。
だから、我々が買うスーパーなどで、どこの芋かも分からないような素性の知れないものはない。必然的に美味しいサツマイモを入手できることとなる。
次は焼き機が異なる。プロの焼き芋屋は何でサツマイモを焼いているのだろうか。移動式と店舗では大きく異なる。先ず、店舗では、殆どが業務用オーブンだ。大型であり、遠火でじっくりと焼くことができる。移動式は石焼である。遠赤外線効果でじっくりと焼くことができる。
筆者のおいしい焼き芋の作り方
普通、美味しい焼き芋の焼き方となるところだが、ここではあえて焼き芋の「作り方」と表現した。これは焼き方が全てではない、仕入れも重要と強調したいからだ。
仕入れは大事だが、筆者はアマチュアなので市場や近隣農家からというわけには行かない。専らネットから仕入れを行っている。ヤフオク、メルカリなどからだ。
近くのスーパーではどんなものが売っているか分からないのでネットからとしている。ネットでは生産者直通だ。売り文句もきちんと確認できる。「美味しいサツマイモ」とか「蜜芋」などと書かれていることが多い。額面通り受け取って良いかどうかは別にして、筆者の経験では特に不味いハズレ芋にあたることはなかった。かと言って、特別に美味しいかと言えば、そこは値段により差異があるというところが正直なところ。
中でも、訳あり品はコスパが最高であった。
自分で食べるだけなので形が不ぞろい、傷があるなどというサツマイモでも十分。甘くて美味しければそれで良い。
低温でじっくりと焼くために様々な焼き方があるというのは先述のとおりだが、筆者は魚焼き機を使っている。
なぜ魚焼き機かというと我が家のオーブンがちゃちで多くを焼けないという理由以外に、オーブンでは電気代がかかるからだ。3時間で60円くらいの電気代ではあるが、月に20回焼くとすると優に1000円を超えることとなる。
まあ、大した金額でもないが、ただでさえ芋に大枚?をはたいているのでできるだけ燃料代をかけたくないというのが正直なところ。
と言って、他の方法で焼いて、美味しくない焼き芋が出来てしまうのは本末転倒。そこで出てきたのが魚焼き機だ。
魚焼き機とオーブン、どちらが美味しい焼き芋が焼けるかというと、実は、優劣が付けられない。もしも明らかにオーブンの方が美味しいとなると、どれだけ電気代がかかろうが高いオーブンを買いオーブンを使うが、どちらでも結果が変わらないなら魚焼き機の一択となる。
さて、魚焼き機での焼き方だが、実は魚焼き機では70度前後をキープするのは難しい。見てのとおり、ガスの炎とサツマイモの間隔が狭すぎるのですぐに高温になる。
なので、アルミフォイルを巻くことは必須。そのうえで、15分焼いたらガスを切り、10分そのまま、これを4回繰り返して最後にガスを切ってから1時間以上放置、という焼き方である。
15分焼くときに70度を超え、10分間燃焼していない間に高温からだんだんと温度が下がり70度台を通過する。こうして70度程度を長くキープするという方法を取る。
焼き芋の旬はいつか
冬の風物詩と言われる焼き芋だが、秋から初冬にかけての収穫で出回る時期が冬ということで冬が旬なのは間違いない。卸売市場の出荷量からも明らかだ。
札幌市卸売市場では日々のデータが公開されているので、下図はそのデータを用いて作成した図である。
毎日のデーターを月ごとに集計したものである。出荷量は毎日の出荷分を加算した値で単位はトン。単価とは5キロ入りの箱ひと箱あたりの価格の平均である。
期間は2020年7月から2021年12月までの分を集計した。重なる月については平均を取った。
夏場は出荷が少なく、9月から出荷量が増え、ピークは10月。11月以降は若干減るが2月に再び増加に転じ、3月までは出荷量が維持されている。4月から急激に減り、最少は7月である。
総じて、9~3月がシーズン、4~8月がオフシーズンと言える。
サツマイモの値段はいくらが妥当か
価格面でもシーズンが分かる。図のとおり、シーズン中は価格は安め、オフシーズンは高めとなっている。
日々の取引では高値、中値、安値の3種類の価格がデータとして提供されているが、本図は中値のみを抽出している。
見てのとおり1310円から2199円までとなっている。平均は1600円程度である。
これは5キロの価格のため、100グラム当たり32円となる。
中型のサツマイモは1本300グラム程度なので、大体96円ぐらいだ。
この値段は卸売業者から仲卸業者への卸価格なので、ここから小売店わたり我々消費者に届くことになるので、更に根が上がることになる。
もちろん、安値はもっと安く、中には5キロで216円というものもあった。このため、仕入れのタイミングによって価格は大幅に上下することになる。
まあ、100グラム50円程度で買えたら安いことになる。
まとめ
以上、美味しいサツマイモの作り方を述べた。結局は、美味しいサツマイモを仕入れること、低温でじっくりと焼くことのふたつが重要という話。良くやる過ちは、じっくりと焼かずに、生芋が柔らかくなっただけで焼き終えてしまうことである。これらを守ると、とっても美味しい焼き芋が出来上がる。是非、チャレンジしてもらいたい。
筆者はこのような考察を経て、美味しいい焼き芋を食べることができている。しかし、ここまでの道のりは長かった。数々の情報を漁ったがどうもうまく行かなかった。
その原因は、どれも、情報をアップする目的のための情報だったからだ。こだわりオヤジのこだわりレシピ―的なものはなかった。あったとしても、その部分だけは極秘となっていた。
という経過を込めて言及するが、おいしい焼き芋の焼き方の情報には注意して接した方が良い。少なくとも、ひとつの情報の中で、様々な焼き方を紹介しているサイトなどは情報としての価値はない。結局、どの焼き方が良いか分からないからだ。
という、当サイトはどうかというと、当然、巷のサイトのひとつとなる。信じるも信じないもあなた次第かも知れない。でも、こうした屁理屈サイトは恐らく焼き芋サイトでは初めてと思う。
少しでも、読んだ方々の焼き芋ライフが豊かなものになることを願って。