明石市長暴言擁護論は、何という誤った見解だ!職員が7年間放置したのならなぜ懲戒処分にしないのか

「何考えて仕事しとんねん。ごめんですむか、こんなもん。7年間放置して、たった1軒残ってもうて。どうする気やったん」

「すまんで済むか、ほんなもん。立ち退きさせてこい、お前らで」
「今日、火つけてこい。今日、火つけて捕まってこい、お前、燃やしてしまえ! ふざけんな。行ってこい、燃やしてこい、今から建物。損害賠償、個人で負え!」「7年間、何しとってん。ふざけんな!」「楽な商売じゃ、ほんまお前ら。あほちゃうか、ほんまに」。

JR明石駅前の国道拡幅で用地買収が遅れているとして、市の技術担当理事(65)が2017年6月14日夕に市長室に呼ばれ、市長にこう怒鳴られた。

明石市長は「パワハラという以上に、酷い発言」と認めて謝罪したというものの市長という立場の人間かと思う発言である。

その後、「市民の安全のためやないか」「そのためにしんどい仕事するんや、役所は」と理事を諭したほか、「行って難しければ、私が行きますけど。私が行って土下座でもしますわ」との続報も出た。

ネット掲示板やツイッターなどでは、当初は市長への非難が多かったが、続報が出てからは暴言を擁護する声が広がっている。

主な市長擁護論の趣旨は

2車線を4車線にする道路拡幅のための買収であり、死亡事故が発生していたなか、拡幅が喫緊の課題。買収を進めることができない部下を叱咤激励をしたというものであって、言葉は過激だが、真意として「頑張って仕事を進めるように」という上司としては至極当然な指導で市民目線では素晴らしい市長である。

更に、市長の発言を最後まで見ると明らかなとおり、過激な部分をことさらピックアップしており、4月の選挙を控えているなか、何らかの作為が感じられる。

市長は自分が土下座をしてまで部下の尻拭いをしようという上司の鏡と言える存在ではないかなどというものだ。

市長発言は擁護するに値しない

こうした擁護の声を聞いて驚いた。物事何でも言った者勝ちというのはこのことだろうか。目的がいかに高尚であっても、言って良いことと悪いことがあるというのが分からなないのだろうか。

確かに喫緊の課題であることは認める。だからと言って、部下指導にどんな言葉を使っても良いというものではない。言われた部下もこの言葉で奮い立つとは思えない。全くの逆効果ではないか。

更に「自分が行って土下座をしてくる」というくだりは、実際に行く訳ではなく「嫌味」で言っているのである。「火を付けて来い」いうのが比喩であるのと同じ次元の言葉だ。この言質で、「部下の代わりに自分が出張って行く素晴らしい上司」という評価をする者は、自分が上司にこう言われて、「どうぞお願いします」と言うのだろうか。

職員がサボっていたなら、なぜ懲戒処分をしないのか

私が引っかかるのは「7年間放置して」という言葉だ。この言葉を文字通り解釈すると、7年間部下は全く何もしなかったことになるが果たしてそうなのだろうか。

引用した全発言から見てみると、7年前から折衝を始めていて、担当者は1人しか置いておらず、この間3人が交代した。発言の前年度末に一度概算買収価格を提示したが、市長は、概算なんて意味がないと一蹴。予算が付いていなかったから概算しか出せなかったとの担当者の弁も無視して先の暴言を繰り返していた。

路線の地権者は大勢いるのに担当者が一人とは驚きだ。そしてその担当者が7年間で3人も変わっているのだ。変わらざるを得ない業務のハードさと言ったらどうなんだろう。

全く何もしなかったことではなく、このように様々なアクションを起こしたうえで結果として結果を出せなかったのだ。これを放置というのだろうか。

もしも市長の言うとおり放置していたのなら、事務の懈怠であり、叱責する、しないの問題ではない。職員の懲戒問題なのだ。市長は、まず、叱責をするのではなく、職員を懲戒処分に付さなくてはならない。

尤も、市長は 「とりあえずそいつに辞めてもらえ。辞表とってこい。当たり前じゃ。7年分の給与払え。辞めたらええねん、そんな奴。辞めるだけですまんで、金出せ金も」
などとは言っているが、もちろん、これは懲戒処分の手続きとは無関係だ。

具体的な懲戒処分の方向に話が進まなかったところを見ると、結果が出なかったのは、それこそ結果論であって努力をしていなかったということとは違うということに他ならない。

部下はさぼっていたのではなく、相手があっての話なので、結果として相手の同意が得れなかったという話なのだ。用地買収では「先祖の土地」などと言って、無理難題を投げかけ用地買収の価格を吊り上げようなどとは良くある話だ。

そうした部下の努力を一切否定して頭ごなしに暴言を吐くというのはどんなことがあっても許されるはずがない。

部下の責任は市長の責任であることを自覚しなくてはならない、他人事ではない

仮に、サボっていたことが事実としよう。市長は2期目が終わるというのでもう8年経つ。7年以上前から市長の責務として行っていた事業だ。

理事は、部長に、部長は課長、係長、担当にと、実際の指揮命令系統は複雑だが最終責任は市長にある。理事が7年間さぼっていたとして、叱責するなら、その7年間自身は何をしていたのか。(正確には市長就任後の6年ほど)

何ら適切な指導をせずに、たまたま結果が出ていなかった部分に着目して部下を叱責するなら、その前に、自分がどうだったかを質すべきだ。

市民のためを思うなら、市長自らが襟を正せ

誰がリークしたかということは気になるところだが、誰がリークしようとも録音の準備をして市長と話をしなくてはならないというのは、市長の普段の言動がいかにひどかったかということを物語っている。

物腰柔らかで何も仕事をしない某大臣のような人も困るが、弱い者には強い市長も困りものだ。

市民のためを思うなら、市政が円滑に進むように気を遣うのも市長の役目だ。職員に迎合すれと言っているのではない。職員が自分の力を十分に発揮できる環境を整えてこそ効率的、効果的な業務遂行が可能となり、ひいては市民のためになるというものだ。

明石市長の発言全文をリンクしておく。諸兄も賢察してほしい。