Windows11がリリースされたが、インストール要件が厳しすぎる。筆者はWindows3.1の頃からWindowsを使っているが、インストール要件がこんなに厳しくなったのは間違いなく今回が初めてである。
今までは、若干のハードウェア要件は上がったことはあったが、それは微々たるもので、仮にインストールができないパソコンがあったとしても、殆どが現役では使えない程度のスペックしか持ち合わせていないものだった。
それが、今回のWindows11では現役バリバリのパソコンでさえ、最新のアーキテクチャーでないならふるいにかかることとなった。概ね、3年前より前に製造されたパソコンは軒並インストール不可となった。
Windows11がWindows10の下位互換性があったとしてもインストールができないなら全く意味をなさないこととなる。
そもそも何でWindows11がリリースされることになったのか、何でここまでインストール要件が厳しくなったのか、マイクロソフトの中の人ではないので憶測でしかないが、理由を述べる。
目次
Windows10はなぜ最後のOSとならなかったのか
「Windows10」は“最後のOS”とセンセーショナルに宣伝してから6年が経つ。筆者は当初から「最後のOS」という表現には疑念を抱いていたが、この疑念は正しかった。
技術や人々の求めるものは、時代が刻々と変わるなか、常に変化している。その変化にOSも追随しなければならず、OSは常に進化するものだ。進化したOSを無償で提供し続けることは極端に言えば資本主義に反することになる。
確かに、成熟したOSは進化したとしても進化の度合いは少ないものだろうが、だからと言って未来永劫無償となる程度にしか進化しないとも言えない。進化の度合いが少なくとも進化しているならいつかの時点では以前に比べて多大な進化となっているはずである。
だからマイクロソフトが存在している限り、Windows10が最後のOSとなりうるはずがない。それに、マイクロソフトはもともとOSを売ってなんぼの会社である。そのOSを「最後のOS」として未来永劫無償アップデートすることは、みすみす金の生る木を捨ててしまうことになる。そんなことをするはずがないと思っていたが案の定である。
このように最後のOSという考えは最初から破綻していたのだ。
なぜWindows10を最後のOSとPRしてきたのだろうか
こんな理屈はマイクロソフトが分からないはずがない。それをなぜ最後のOSとPRしてきたのだろうか。ここでも邪推させてもらう。それはWindows10のシェアを伸ばすためである。
Windowsのアップデートは少なからず手間がかかるとともに様々なリスクを伴う。ある程度のマニアでなければ、使えるものは使いたいと考えてWindowsのアップデートは行わない人が多くいることになる。それを最後のOSと銘打つことで、Windowsのアップデートは1回で済むことになる。
この際、Windowsのアップデートをやっておけば現存のパソコンを使う限り、面倒なアップデートをしないで済むとなればこの機会にWindows10にしておこうと考える人が多くなると考えたわけだ。
また、その後のアップデートがなければアップデートのためのお金もかからない。Windows10にしておくことはユーザーにとっては願ったり叶ったりのことなのだ。だからマイクロソフトは最後のOSと大々的にPRしたのだ。
Windows11なぜここまでもインストール要件が厳しくなったのかその建前的理由
Windows11はなぜここまでも要件が厳しくなったかは、ハードウェアのセキュリティを向上させるためとの建前的理由がアナウンスされている。
ひとことでいうと、セキュリティを向上させるためにTPM2.0とUEFIブートが必須とし、これらを円滑に動作させるために、CPUの世代も限定しているというものである。
今までエンタープライズ版で求められていたものを全てのバージョンまでに拡大した形だ。
パソコンのセキュリティ対策はどこまで向上させる必要があるのか
セキュリティ対策については、ふたとおりの考えがある。「セモュリティ対策が100%ということは不可能としても、セキュリティホールとなりうる部分は全てつぶしておかなくてはならない」とする考えと「セキュリティ対策が100%ということは不可能なので、事実上、満足の行く範囲での対策をしておくことで十分」とする考えである。
可能な範囲で100%を目指すか、実用上十分と考えられる範囲に留めるかのどちらのスタンスを取るかである。この辺りは個々人の考え方によるものだが、筆者の考えはもちろん、後者となる。
今回の要件ではTMP20を必要としている。TPMの利用例としては、Windowsの「BitLocker」での利用が挙げられるがコンシューマーユーザーでどれほどの人がBitLockerを必要としているだろうか。果たして、これほどのセキュリティ機能が個人ユーザーにとって必要なことだろうか。
もしも絶対的に必要なものであれば、なぜ、今までのバージョンで求めてこなかったのだろうか。今回は全てのバージョンで一律要件を厳しくしているが、例えば、proエディションからにしても良かったのではないか。それをなぜ、全てのバージョンで一律厳しくしたのだろうか。
Windows11要件に対する世間の声はどうか
大手メディアや企業はWindows11のハードディスク要件が厳しくなったという事実だけを淡々と伝えるか、セキュリティが向上したことを好意的に伝えるかのどちらかであり、否定的なコメントは殆ど見られない。
しかし、これは立場上のことだろう。マイクロソフトとの関係性もある。関係がないとしても、セキュリティ向上を否定する何ものもないからだ。「セキュリティはそれなりで良い」などとは企業イメージから口が裂けても言えないだろう。
「セキュリテオは必要だ」当たり前のことだが、度が過ぎると正に正論の暴力となってしまうことを忘れてはならない。
一方、個人ユーザーからはインストールができないことに対する恨み節が聞こえてくるという状況にある。
マイクロソフトはどう動いたか
プレビュー版等に対する反応を聞いて、インストール可能なCPUの世代をインテルでは8世代限定から7世代の一部に拡大した。また、ユーザーの危険負担のうえ、Windows11をインストールすることを可能ともした。
インストール要件を更に緩和すべきと思う。今後の対応を期待したい。
変更点が少ないのになぜWindows11はリリースされたか
ユーザーが必要としている機能を実現するために求められるハードウェア要件があるとするならだれもが納得する。しかし、indows11はWindows10とそれほど大きくは変わっていない。できることもandroidのアプリを動かすことができるようになったこと程度にしか変わらない。大きなアーキテクチャの変更は見られない。
それにも関わらずセキュリティ向上の名のもとにハードウェアの足切りをした。誰もが求めるものがセキュリティ向上というなら納得するが、少なくとも筆者はOSがインストールできなくなることとトレードオフとなる程度には求めていない。
おそらく、個人ユーザーなら誰しもが同じような考えだろう。そうした声が多く出ることをマイクロソフトが知らないはずがない。それでもハードウェアの足切りをしなくてはならなくなったのは、他に大きな理由が存在すると思っている。
マイクロソフトがWindows11のインストールでハードウェア要件を厳しくした真の理由とは
これは全くの個人的見解である。マイクロソフトはWindows10を一般に広めるために旧OSからの無料アップデートをしてきた。だから今のWindows10はWindows7のキーでアップデートができる。
このアップデートはあくまでも現在のパソコンのみであるが、Windows11はWindows10から無償アップデート可能だ。ということは、ハードウェア要件を付けなければ、現存のパソコンでWindows10から無償アップデートされてしまう。
最新のパソコンなら無償アップデートも仕方がないことだが、古いパソコンでこれをやられたら、Windows11が売れないのでindows11での利益が出なくなってしまう。
これが他のパソコンなら無償の対象とはならない。古いWindows10の入ったパソコンがあるから新品のパソコン価格からOS分を値引きするなどとは、当たり前だがならないのだ。
古いパソコンからWindows11の入ったパソコンへの買い替え需要を喚起することで、Windows11の売り上げを伸ばすことができる。
このようにマイクロソフトがハードウェア要件を厳しくした真の目的は、旧Windowsからのアップデートを不可能にしてWindows11を買ってもらうことにある。
Windows10はあと4年間使うことができるので、Windows11にアップデートできなければWindows10を使い続けるだけなので、別に要件を厳しくしたところで買い替え需要が生ずるとは思えないとの意見もあるかも知れないが、一定の層はWindows11にアップデートできないことを契機にパソコン買い替えることは間違いない。
ある程度古いパソコンであってもWindows11が使えるならしばらく使うが、使えないとなれば、これを機に最新のパソコンに買い替えようと思うのは自然なことだろう。
まとめ
今までのWindowsのアップデートは機能に重点が置かれており、少なからずユーザーに利益があった。しかし、今回のWindows11は個人的にはユーザーに利益は全くないと思っている。
良いように、マイクロソフトに乗せられている感が否めない。インフラを他国の企業に任せる危険性が露呈されている。国産OSはできないのだろうか。
そろそろ国指導でパソコンのOSの在り方を研究したらどうか。いや、OSだけではない。ワードやエクセルなど今では事務に欠かせないパソコンソフトもあるが、日本ではjustsystemが一太郎や桐で頑張っているというのに、皆、そっぽを向いているように見える。
国指導でスマホ料金を下げたように国指導でITインフラの在り方を考えたらどうなのだろうか。デジタル庁もできたことだし。
Windows11のリリースを契機に考えることがたくさんできた。