ストロー

環境に悪影響を及ぼすとして、アメリカのコーヒーチェーン大手「スターバックス」は2020年までに全世界2万8000以上の店舗でプラスチック製ストローの提供をやめると発表した。追随する動きは広がり、他の企業も「反ストロー主義」を受け入れざるを得ない状況となっている。これは正しいことなのか。

数年前から盛り上がってきたプラスチックゴミの草の根的廃止運動が企業を動かしたという側面はあるものの、今なぜ、世界各地でこうしたプラスチックストローを廃止する動きが起きているのかというと、直接的にはオーストラリアの海岸に打ち上げられたウミドリの体内から234個ものプラスチック片が出てきたことや、ウミガメの鼻にささったプラスチックのストローを抜く映像がセンセーショナルに公開されてきたからだ。

薄い材質のプラスチックストローは海水に触れて微小なマイクロプラスチックに分解されて、海鳥やクジラ、魚介類が口にしてしまうが、この問題はプラスチック製品が悪いのだろうか。

スターバックスの取扱いは一貫性がない

先のスターバックスではストローの代わりに試験的に導入されているのが、ストローがなくても飲めるという透明のフタに三角の穴が開いている特製の容器。でも、この容器もどう見てもプラスチックだ。

プラスチック製のストローは排除した代わりにプラスチック製のフタに工夫をしたと言っても、環境問題に正面から取り組んでいるという説得力には欠ける。まあ、全てのプラスチックを排除できないので、まずは、排除しやすいストローから排除したと言い訳はするだろうが。

なぜプラスチックストローだけを悪者にするのか

ウミガメがストローを食べていたからストローが悪いのか? 隣のウミガメはペットボトルを食べているかも知れない。ウミドリの体内から234個ものプラスチック片が出てきたからストローが悪いのか? そのプラスチック片はスタバコーヒーのフタから出たのかも知れない。

ストローは悪いというのに、プラスチックの容器やフタに何も言わないのはなぜか。特定のプラスチックだけを悪者にする風潮は理解できない。

一説によると、ペットボトルの容器を問題視すると様々な影響力を行使できる大大企業を相手にすることになるから言及せずに、零細企業の多いストローを狙い撃ちにしたと言われている。また、企業が環境問題に力を入れていることをアピールするために、つまり企業イメージを良くするためにストローを悪者にしたという説もある。真偽のほどは定かではないが、そう言ったこともあるのではないかと思う。

プラスチック製品を悪者にすると産業問題となる

日本でもプラスチックゴミ問題は以前から言われて来たが、ここまで急速に反対運動が起きることは予想していなかった。プラスチックゴミ問題は消費者の視点では環境問題となるが、ストロー等を製造している業者に取っては死活問題となる。しかし、産業界の意見を聞く暇もなく、日本はプラスチックゴミ問題から目を背けているとのレッテルを貼られようとしている。

プラスチック業界は中小企業が多い。一気に抜本的な改革を行うと地域経済への影響は計り知れなくなる。プラスチック素材を紙素材に変えると言うことは簡単だが、実現するならばどれだけの企業が倒産するかを考えなければならない。

環境問題はゴミ処理の問題である

日本では、家庭から出る廃プラスチックは、資源、可燃ゴミに分別され、資源に分別されるプラスチックマークのついたプラスチック製容器包装、白色トレイ、レジ袋、ペットボトルマークのついたPETボトルはリサイクルされ、それ以外の廃プラスチックは可燃ごみに分別され、燃やされて発電などの熱利用がされている。つまり、廃プラスチックはしっかり有効利用されているということだ。

このようにプラスチックゴミはきちんと分別されて処理されていれば何も問題ない。環境問題になるものではない。

プラスチックゴミで環境問題が生じると言ってゴミ処理の問題を棚上げにして特定のプラスチック製品を悪者にするのが理解できない。

問題点をすり替えているということだ。ストローが悪いのではなくて、きちんと分別処理をしない人間が悪いのだ。ウミガメがストローを食べていたからストローが悪いのではない。捨てた人間が悪いのだ。

しっかりとゴミ処理や分別についての運動や議論をするべきだ。ストローをなくせというのは拙速だ。