登録免許税減額

会社を設立しようとする場合のネックはその設立費用にあるのではないでしょうか。そのうちの大きな割合を占めるのは、国に支払う登録免許税です。株式会社であれば最低15万円、合同会社でも6万円がかかってしまいます。

この費用が半額になる方法があるのをご存じでしょうか。それが特別創業支援事業を受けるという方法です。

特別創業支援事業とは何か

我が国の開業率は5%程で欧米の半分程度にとどまっており、中小企業数も低下の一途をたどっています。このため、地域の創業を促進するため、産業競争力強化法が平成26年1月に施行され、市区町村が民間事業者と連携して創業支援を行う取組みを国が支援することとなりました。

具体的には、市区町村が中心となって、地域で連携する創業支援事業者(地域金融機関、NPO法人、商工会議所・商工会等)とともに「創業支援事業計画」を策定し、これを国が認定することで、補助金をはじめとした関係省庁の各種施策やメリットを活用出来る内容となっています。

この「創業支援等事業計画」の中身としては、例示すると、ワンストップ相談窓口の設置、創業セミナーの開催、起業家教育事業等の創業支援及び創業機運の醸成の実施などになります。

創業支援等事業計画では、創業者の経営、財務、人材育成、販路開拓等の知識習得を目的として継続的に行う創業支援の取組を「特定創業支援等事業」と位置づけ、本支援を受けた創業者には、登録免許税の軽減措置、日本政策金融公庫の融資制度である新創業融資制度の自己資金要件の撤廃等の支援策が適用されることになります。

要は、国が認定した市区町村における「創業支援等事業計画」に基づき実施される特別創業支援事業を受講すると様々な特典 (特典と言ってしまえば語弊があるかも知れませんが、イメージ的にこちらの方が分かりやすいので当サイトでは「特典」と表記させていただきます)があるということです。

特別創業支援事業の対象者は誰か

様々な特典を受けるには、特別創業支援事業を受講したことの証明を受けなくてはなりません。

この交付対象者は、「事業を営んでいない個人」または「事業を開始した日以後5年を経過していない個人又は法人」となりますので、これから起業しようとする方は問題なく対象となりますが、例えば事業を開始して5年以上経つ者が法人成りをしようとしても利用することはできません。

事業の開設地はとこか

国が認定した市区町村での事業でなければ該当しません。認定された市区町村は次の中小企業庁のホームページいで確認できます。
http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/chiiki/nintei.html

特別創業支援事業を受けることで得られる特典の内容

登録免許税が半額になる以外に次のような特典があります。

創業関連保証枠の特例

信用保証協会における無担保、第三者保証人なしの創業関連保証枠について、通常、事業開始2カ月前から対象となる保証を事業開始6カ月前から利用することが可能となります。

日本政策金融公庫の融資制度

日本政策金融公庫の新創業融資制度を、創業資金総額の10分の1以上の自己資金要件を満たす方として利用できます(別途、審査を受ける必要があります)。
※融資を受けられる対象者は、創業前または創業後税務申告を2期終えていない事業者です

日本政策金融公庫新規開業支援資金の貸付利率の引き下げ

新規開業支援資金の貸付利率の引き下げの対象として、同資金を利用できます(別途、審査を受ける必要があります)。

特別創業支援事業を受ける際の具体的な注意点

大枠は国が定めたとおりですが、細かな事務は市町村によって異なる場合があります。以下は私が住む町に確認した内容ですが、恐らく殆どの市区町村で共通ではないでしょうか。

異なる団体のセミナー受講や相談会参加でもカウントされるか

特別創業支援事業には起業セミナー、起業塾等、様々なものがあり、特別創業支援事業の証明書を受けるための要件も各市区町村により細かく定められています。

例えば、商工会議所での特定セミナーを4回受講した場合やNPO法人が主催した特定セミナーを4回受講した場合に証明書が発行されるとした場合、商工会議所でのセミナーを2回、NPO法人が主催したセミナーを2回、合計4回受講した場合に証明書の発行が可能かどうかということです。

これはあくまでも規定されている範囲のみということです。つまり、「商工会議所での特定セミナーを4回受講」とあれば、そのとおりであって、これに他団体のセミナーは含まれないということです。このため、例えば相談4回で証明書が発行されるとした場合でも主催が違えば通算されません。

支援を受けたかどうかの確認はどのように行われるか、セミナー等の受講証明書などが必要となるか

これは申請書に記載した団体から情報提供を受けるので申請者は証明書等を用意する必要はありません。ただ、この辺りは単なる事務処理内容となりますので、各市町村により異なる可能性はあります。

セミナー等を今年と来年に分けても大丈夫か?

基本は同一年度内ですが商工会議所でのスポットセミナーは年度をまたいても大丈夫です。

それ以外については、例えば、今年ある団体でのセミナー4回の参加が必須として、たまたま、1回欠席した場合、翌年に受講した同一セミナーでカウントされるかといった年度を跨いだ場合については事前に相談してもらいたいということでした。そのセミナーの内容等で判断するようです。ただ、この当たりも証明書発行者により異なる可能性はあります.

設立する商号、所在地、資本金が決まっていないときは申請できないのか

申請書には設立する商号、所在地、資本金を記載する欄があります。この内容で証明書が発行されるため、必ず記載しなくてはなりません。

証明書と実際に登記する商号が異なっている場合は登録免許税が減額されない可能性があります。もしも、証明書の内容が変更になった場合は再申請することで正しい内容の証明書が発行されますが、できるだけ変更はしない方が良いと思います。

事業開始時期は日にちまで記載するようになっているが、これは何の日を書くか?法人設立日か、これが未定のときは? 年頃との記載も可能か?

会社設立予定日を日にちまで記載します。会社設立日は登記日となりますが、予定していた日に登記ができないことも考えられます。実際に、証明書の日にちに法務局に行けなかった場合は証明書は無効となってしまうのでしょうか。

これはあくまでも法務局の問題ではありますが、無効となる可能性も否定できないということでした。もしも予定日に登記ができないのなら、事前に証明書の再発行を受けておいた方が無難と思います。

登録免許税の減免のためには、この証明書の有効期限はいつまでか

2020年3月一杯。今後については今の所国からの通知はない。

まとめ

以上見てきたとおり特別創業支援事業を受けることにより登録免許税が半額になるという大きなメリットがあります。

それではこの特別創業支援事業はどのようなスタンスで受ければ良いでしょうか。先ず、登録免許税の減免のみの目的であればできるだけ手間暇がかからない方法を考えるべきと思います。私の町では2時間程度の単発セミナーがいくつかありましたのでそれを受けるのが良い方法と思いました。

しかしながら、こうした特別創業支援事業は起業に大変役に立つものですので、内容を詳しく調べて自分が本当に必要としている支援を能動的に受けるのが今後のためになるのではないでしょうか。

今の所2020年3月一杯ということですのでもしかすると制度自体がなくなるかも知れませんので早めに利用した方が良いと思います。

ただ、予算等の関係で今後について明確にできないだけで、経済の活性化は恒久的課題ですので、期限の延長はされるのではないかと個人的には思っています。