火災

札幌の「そしあるハイム」という集合住宅で高齢者等11人が死亡した火災が今年2月に発生した。

被害者が多いうえ、その殆どが高齢者であり生活困窮者であったことから、大きな社会問題となり、北海道では様々なタイミングで報道がなされている。

この、報道等の流れを見ていると、どうしても原因究明や再発防止についての議論がなされているとは言い難いと感じている。

法律上の位置付けはどうだったか

先ず、何度も繰り返されて言われていることであるのが「法定上の位置づけのあった施設であるのかどうか」という点を報道では何度も取り上げていた。何らかの法令上の位置付けがあればその法令がどうであったかの検証ができるということで、位置付けがあったかどうかの確認は当然重要である。

その結果、法定上の位置づけのない施設ということであった。

ここで問題なのは、食事も供給して一定程度の世話をしていても法定上の位置付けにない点である。この理由として、主に高齢者を対象としていないからという。高齢者が対象であったならば老人ホーム的な位置付けとなっていたようだ。事実、40代の者のいたようで老人施設でないことは確かに間違いないだろう。

それでは何であったかというと、何でもない。恐らく、普通の寮的なものだろう。何でもない寮、個室の集合アパートに過ぎない当該施設が火事になったということである。その寮にたまたま、高齢者や生活困窮者がいたということだ。

そうすると、法的には何も位置づけがなければ、通常の火災予防という観点での扱い以外あり得なくなるがここで、論点がまた別次元に行っている。本来であれば、そうした通常の寮的なものであっても一定の社会的弱者がいた場合何らかの法的位置付けはなされないのかという点に論点が移るべきであるにも拘わらずだ。

法的位置付けにした場合、その法律で改修等を行わなくなってしまうと、そもそもこうした施設が存在し得なくなるというジレンマがあるので、法的整理はしないのかとも勘ぐってしまう。そうであっても、こうした需要に対する対応を当該法律によって他の施設や方策により考えるべきものと思っている。

生活困窮者に対する住宅の確保はどうなっているのか

別次元の論点とは、生活困窮者が多いなら生活困窮者に対する住宅の確保はどうなっているのか、言葉を変えれば、なぜこうした施設が存在しているのか。通常のアパートになぜ入れないのか、行政の対応がまずいのではないのかという論調であり、次には行政が対応できないのなら、こうした施設が必要となる。なので行政はこうした施設に対して補助を行うべきだとなる。これに対して行政は法的位置づけがないので無理、これを補助するとなると普通の寮やアパートまでを補助しなくてはならなくなると言ったかどうかは知らないが、何れにしても行政の対応ができないというところで話が終わっているらしい。

私は、先のとおりこうした施設の法的位置付けの明確化や、こうした施設がなぜ需要があるのかという観点、それと、防火の観点での議論が不足していると思っている。

こうした施設がなぜ存在するかということに関しては、施設は赤字運営だったらしく、貧困ビジネスではなかったようだが、そうしたニーズがあったからである。

そうしたニーズとは、高齢であったり低所得者であったりしたために、通常のアパートには入居できなかったということである。そうした人たちがどの程度頑張って部屋探しをしたかは不明だが、そうした弱者に対して手を差し伸べたのが当該施設であったというわけだ。

言葉は悪いが、身内や保証人がいないなどで通常のアパートでは入居を断られるような人達をどうサポートするかということだ。

国は「住宅セーフティネット法」を改訂して、そうした人たちへの支援を決めているが登録されている住宅の情報をどうやって入手するかという問題もある。

防火上の観点はどうなっているか

一方、防火に関する視点はどうなっているのかと思っている。報道がされていないので詳細は不明だが、防火の観点での指導等のあり方や課題、今後の対応はどうなっているのだろうか。

窓から脱出できれば助かったはずだがこの窓には雪庇でガラスが割れないように開かなくしていたと聞く。2階であっても雪が積もっていたので窓から飛び降りることさえできていれば怪我をすることはあっても亡くなることはなかったと思う。

素人目線であるが、このように脱出できないような作りの窓は防火上問題なかったのだろうか。はなはだ疑問である。

こうした点が議論の中に含まれていないのがどうかと思っている。