公務員

平成30年8月10日(金)に人事院から国家公務員の定年延長に係る意見の申出が政府に対して行われた。

政府が人事院に対し、論点整理を踏まえ定年の引上げについて検討を要請していたものであり、「経済財政運営と改革の基本方針2018」(閣議決定)においても、「公務員の定年を段階的に65歳に引き上げる方向で検討する」等としていることから、早晩、公務員の定年は65歳となる。

そして、何れ民間も65歳が定年となる。定年が延びて長く働けると喜ぶのは早計だ。

制度にはいくつもの疑問点が見られることを考えると、定年延長は年金支給開始を遅らせる外堀を埋めているに過ぎないのだから。

定年延長に係る意見の申出の内容と疑問点

申し出の内容はこちらにある。以下引用しつつ疑問点を書いて行く。
申し出の骨子

・少子高齢化が急速に進展し、若年労働力人口が減少。意欲と能力のある高齢者が活躍できる場を作っていくことが社会全体の重要な課題。民間では定年を引き上げる企業も一定数見られ、再雇用者の大多数はフルタイム勤務

これは確かにそうだ。意欲と能力のある高齢者には活躍してもらいたいし、それが社会の要請でもある、はずだ・・・・が本当にそう考えているのだろうか、以下のとおり疑わしい。

役職定年制の導入
・新陳代謝を確保し組織活力を維持するため、当分の間、役職定年制を導入

活躍してもらいたいと言っておきながら、役職については定年制を導入する。活躍して欲しいなら、なぜに、定年制を導入しないとならないのか。

・「賃金構造基本統計調査」では、民間(管理・事務・技術労働者(正社員))の60歳台前半層の年間給与水準は60歳前の約70%。「職種別民間給与実態調査」でも、定年延長企業のうち、60歳時点で給与減額を行っている事業所の60歳を超える従業員の年間給与水準は60歳前の7割台・これらの状況を踏まえ、60歳を超える職員の年間給与について、60歳前の7割水準に設定。

現在の民間が60歳前と比べて60歳以降の給与は7割程度となっているので現状の民間に倣い7割程度に抑えるってことだが、民間の60歳以降の給与が下がっているのは当たり前だ。今は定年延長にはなっていないのだから。60歳で一旦定年になったのだから、給与水準が下がるのは当然だ。60歳で定年としないのが定年延長の制度なら、定年で給与が下がるのを倣ってどうするのか。再任用ではなく、定年延長をしたはずなのに、これでは現行の再任用と何ら変わらないのではないか。

・職員の自主的な選択としての早期退職を支援するため、退職手当上の措置や高齢層職員の能力及び経験を公務外で活用する観点から必要な方策を検討

「早期退職を支援」って、できればいて欲しくないと言わんばかりである。わざわざ、「職員の自主的な選択」と言い訳することが何ともなく嫌らしい。

本気で60歳以上の職員に活躍して欲しいと思っているのだろうか。

能力・実績に基づく人事管理は大切だ

(1) 能力・実績に基づく人事管理の徹底等

・職員の在職期間を通じて能力・実績に基づく人事管理を徹底するなど人事管理全体を見直す必要。人事評価に基づく昇進管理の厳格化等を進める必要。人事院としても必要な検討を行う

・勤務実績が良くない職員等には降任や免職等の分限処分が適時厳正に行われるよう、人事評価の適正な運用の徹底が必要。人事院としても分限の必要な見直しと各府省への必要な支援を行う

これは当然のことだ。この申出でこう言及しなくてはならないということは現在は「能力・実績に基づく人事管理」が行われていないということか。

私は、この部分は今回の申出の肝と思っている。60歳を過ぎると体力、能力、やる気も失せてくる者も少なからずいると思う。そうした者に対してはここで言及されているとおり必要な処分を行うべきだ。

その処分の結果として役職定年、給料減額があるべきものと思っている。

つまり、体力、能力、やる気も十二分にある者に対しても一律の網掛けで役職定年、給料減額をするべきではないと思っている。

若年者と雇用形態が異なる制度はもはや定年延長とは言えない。見せかけの延長であり、内容は再任用と何ら変わらないのである。

年金支給開始年齢を上げるための定年延長

なぜ、このような見せかけの定年延長を行わなくてはならないのかというと、今回の申出の中では年金に関しては何も言及していないが、要は年金支給開始が65歳となっているなか、更なる開始年齢の引き上げには定年が60歳であったら困るからである。そうした意図を言及していないからこそ見え見えである。

[aside type=”normal”] 定年も65歳となったことだし、68歳までの再任用制度でも作っておけば年金開始年齢は68歳で良いよね。