千葉小4虐待死事件:児童相談所のあってはならない不作為という対応、当該児童相談所の他のケースは大丈夫なのだろうか

死亡した10歳の長女が父親に書かされた、書面の内容が報道で明らかになった。以下、毎日新聞報道を要約すると次のような内容である。

心愛さんは17年11月、学校のいじめアンケートに「お父さんにぼう力を受けています」と記入し、これを受け児童相談所は同年12月まで一時保護し、その後、親族宅で暮らすことを条件に保護を解除した。 しばらく、親族宅で暮らしていたが、18年2月、父勇一郎容疑者(41)が心愛さんに「お父さんにたたかれたのはうそ」「4人で暮らしたい」などと書かせた書面を柏児童相談所に提示したことから、児相はその翌々日、心愛さんに確認しないまま自宅に戻す決定をした。
心愛さんが3月上旬、自宅アパートに戻ったのち、児相職員が小学校で心愛さんと面会し、「書面は父親に書かされたこと」を確認した。
児相は取材に「最初から書かされた可能性があるとは思っていた」が、「父親が虐待を認めない中、自宅に戻すことはリスクと考えたものの、学校内での見守りができており、何かあればすぐに介入できる体制をとっていたことから、総合的にみて自宅に帰した」としている。
だが、児相は心愛さんが自宅に戻った後、一度も自宅訪問せず、勇一郎容疑者への面会もしなかった。学校に約1カ月間姿を見せなくなったことを知った後も訪問せず、心愛さんは1月24日深夜、自宅浴室で死亡しているのが見つかった。

児童相談所の対応に批判が集中している

この児童相談所の対応に批判が集中しているのは当然だ。

最初に、この手紙を児童相談所側が見せられたときから、これは書かされたと認識していたのなら、なぜ、保護を解除する決定をしたのか、と誰もが思うだろう。

これに対しては、「学校内での見守りができており、何かあればすぐに介入できる体制をとっていた。総合的にみて自宅に帰す判断をした」更には別の報道では「親族の体調不良」も挙げている。

「学校がちゃんとやってくれるし、親族も見れないと言っているし、何かあればすぐ対応するので大丈夫と思った」という言い訳だ。

学校が全責任を負うなら児童相談所はいらないだろう。親族が見れないなら、再度、児相の一時保護ではないのだろうか。どれを取っても、言い訳に過ぎない。

更に、児相職員が、「父親に書かされた」ことを確認しても何も手を打とうとはしなかったのみならず、その後、一度も自宅訪問をしなかった。

ここに到っては、行政の不作為としか言いようがない。

この児童相談所に通報した他のケースは大丈夫なのか

児童相談所の業務は何なのか。虐待をしている者におもねることなのか。

児童相談所の業務が多忙であり、困難な業務であることは理解する。しかし、虐待をしている者への対応は根本的な業務なのではないか。

当然、虐待をしている者は虐待を否定するだろうし、ひとたび、そうした疑惑をかけられたら逆上するだろう。虐待者のそうした反応は当然だ。虐待を本当にしていれば、発覚を恐れるだろうし、していなければ、事実として反論してくるからだ。

だから虐待を行っている(かも知れない)者への対応に苦慮するのだが、そこはプロの目、プロのノウハウが活かされてしかるべきだ。

子供が「虐待なんかありません」といった文書を書くことは誰が見ても不自然だ。当然、児相職員も不自然に思ったわけで、それなら、そこでこそプロのノウハウが活かされるべきものだ。

虐待をしている者の言い分なんかは、定型化している。誰が考えても言って来ることは決まっている。「虐待なんかしていない」と言ったり、逆上してきたり、「訴訟を起こす」と言って来たりするのは日常茶飯事だろう。

そうしたときの対応をきちんと考えていなかったとしたら、今までどのような仕事をしていたのかと言いたい。

事件にこそならなかったが、虐待を受けていた者を虐待者の言い分をそのまま鵜呑みにして返してしまい、今現在も虐待が続いているというケースはないのだろうか。そこが心配だ。保護を解除したケースを再度、第三者がチェックする体制を整えなくてはならないのではないか

なぜ児童相談所はここまでルーズだったのか

こうしたルーズな対応は、当該児童相談所だけの問題なのかということも気になる。

過去、同様な事件は多く発生してきた。その教訓は活かされなかったことになる。このことは、他の児童相談所にも言えることではないだろうか。

全ての、児童相談所がこうした問題をかかえているということはないだろうが、少なからずこうした児童相談所はあると思う。

なぜ、こうなるか。

職員配置に問題はないか

ひとつは職員配置の問題があると思う。絶対的な人数不足ということもあるのではないか。それと、職員の資質もあるのではないか。

クレーマーに対する説得も論理的に行う必要がある。どのような経緯で保護に至ったのか、なぜ、虐待があると判断したのか、行政と保護者の言い分の違いがあるとどのような組織がどのように判断するのか、判例はどうなっているか、などを分かりやすく説明する義務はある。

当然にこうした説明は行っているものとは思うが、きちんと良く分かるように話したであろうか。

大変失礼ながら、児童相談所はあくまでも出先機関であり、市の中枢部ではないだろう。行政職員もピンからキリまでいると思うのでどのような職員が配置される構図になっているのか知りたいところだ。

要保護児童対策地域協議会は機能していたか

更に、要保護児童対策地域協議会という要保護児童等のへの適切な支援を図ることを目的に地方公共団体が設置・運営する組織がある。児童福祉関係、保健医療関係、教育関係、警察・司法関係、人権擁護関係の組織が構成員となっている。

各関係機関等が連携を取り合うことで情報の共有化が図られ、迅速に支援を開始することができるとされているが、この組織は今回の場合、果たして機能していたのであろうか。

延々と繰り返すクレーマーになれば、威圧的になり、それが正常な業務を妨害するのであれば、威力業務妨害ではないか。警察もこの組織に加入しているなら、当然に連携を図るべきだったのではないだろうか。

解決策はないのか

私は、解決策として2つの方法があると思っている。

司法権の導入

ひとつは、以下のブログで紹介した司法権の導入である。詳細は次を参照してほしいが、もしも、今回、この司法手続が行われていたら、悲惨な結果にはなっていなかったのではかと思うのは私だけであろうか。

危険度をワンランク上げること

保護や解除の際にアセスメントを行うが、恐らく点数で表していると思うが、この基準を機械的にワンランク上げる。

今迄、この点数なら保護しなくて良いというラインであっても保護し、逆に、この点数なら解除になるというものは解除しない。すなわち、保護するときには保護しやすく、解除はしずらくする。

当然、本来必要のない保護となる可能性があるため、これを暫定保護として、従前の基準なら保護していなかった場合は、保護後は慎重に状況を確認して、保護の必要がないと判断したならばその段階で保護を解除する。

何れにしても、二度とこのような事件があってはならない。