税務署

個々人のマイナンバー自体は政府が知っているのに、様々な申請用紙にマイナンバーの記載をさせることなどないのではないか。実際に確定申告と国保で体験した内容を記載。

はじめに

一時、国民総背番号制度が頓挫したが、マイナンバー制度は、これと何ら変わらない。議論が十分行われたとは言い難いが、いつの間にか浸透してしまった。

そのうえ、良く分からないのが、記載をさせる必要性である。

毎年、医療費控除の関係で確定申告を行っているが、昨年の確定申告では、マイナンバーを記載しなかった。

意図的に記載しなかったのではなく、気が付かなかったのだ。それでも、申告書は受理され、きちんと税金は戻ってきた。

それが、今年の確定申告書の作成画面では、仕様が変わったようで、マイナンバーの画面が出てきて、キャンセルを押さない限り、先に進まなくなっていたので、否応なく確定申告にマイナンバーが必要なことを知らされた。

マイナンバーの記載は本当に必要なのだろうか。

なぜ、マイナンバーの記載にこだわるかというと、マイナンバー制度は平成28年にできたはずである。昨年、気が付かずに、マイナンバーを記載せずに提出して、還付を受けることができたのはなぜなのだろうかと疑問に思い始めたことと、別居の義母を扶養に入れているがマイナンバーが分からなかったからだ。

ただ、昨年、実際に還付を受けたので、記載しなくても大丈夫と思い、記載せずに郵送したが、後になって、不安になってきた。

なので、「本当に、確定申告でマイナンバーの記載は必要かどうか」色々とネットで調べたが、どのサイトでも、「税申告上、マイナンバーを記載するのは国民の義務なので、記載しましょう」と言っている。

当たり前のことである。

こちらが聞きたいのは、法整備上の義務ではなく、実態がどのように扱われているかなのである。

もっとはっきり言うと、昨年のように今年もマイナンバーを記載しなくても還付はしてもらえるのかということ。

そこで、実際に税務署に聞いてみた。

マイナンバーの記載が必要なのかどうかを税務署に聞いてみた

私見では、昨年、マイナンバーを記載していなかったが、問題なく還付を受けることができたこと、及び、下記の健康保険の窓口での話があったので、今年もマイナンバーの記載をせずに、還付が受けれると思う。

なので「還付が受けれる」と思いつつ、税務署に聞いてみた。

実際に「確定申告にマイナンバーの記載が必要ですか」などと聞いたら「必要です」の答えしか返って来ないのは明らか。

だから、質問を少し工夫して「マイナンバーの記載を忘れて郵送したが、不備書類としての連絡を待っていれば良いのですよね」と聞いた。

ちょっとフライング気味だったが、2月7日に実際にマイナンバーを記載しないで提出しているので、これは事実である。

これに対しては、「記載がないものでも受け付けている」との返答。いや、そりゃ、郵便で送っているので、受領するのは当たり前でしょう。問題は、不備書類としてはねられるかどうかですよ、と思いつつ、なおも、くどく「兎も角連絡を待っていれば良いのですよね」と聞いた。

すると、「何かあったら連絡しますから」という返答。

こちらが不備を認めて話をしているのに、「何かあったら・・・」というのもおかしな話だ。「不備」は「何か」に該当しないということか。

「それじゃ、連絡が来るのですね」と、なおも、不備書類に対しては連絡が来るという前提で聞いた。

「振り込み通知書が届けば処理が終わっているということです。」との予想外の答え。

こちらは、不備書類として連絡が来るかどうかしか聞いていないのに、答えになっていない。というか、答えの先を行っている。

ただ「マイナンバーが書かれていなくとも問題なく処理をする」という前提に立てばこうした答えは納得する。

担当者としては、連絡しないものを「連絡します」と、嘘は言えないだろう。

かと言って、「マイナンバーの記載は不要です」などとは口が裂けても言えない。

だから、その部分を省いて、暗に、問題なく処理をすると話したものだ。

ただ、この取り扱いは税務署毎に異なる可能性はある。

ちなみに、マイナンバーの記載をしたときに必要となる本人確認の書類の写しは申請者本人のもののみで良いとのこと。

先ほどハガキが来て無事に還付されることになった

もちろん、税務署から何の連絡もなく、振込のハガキが届きました。これで、確定申告でマイナンバーは必要がなかったということが証明されました。

国民健康保険の窓口でのこと

話は変わるが、先日、国民健康保険の手続きに役所へ行った。マイナンバーの記載が必要との事前情報を得ていたので、マイナンバーの番号を控えて、記載したところ、身分証明書の提示を求められた。

後日、友人にその話をすると、友人は、同じ手続きをしたときにマイナンバーの記載は必要がなかったという。確かに、申請書にはマイナンバーを記載する欄があったが、マイナンバーに関するものは持っておらず、分からない旨、伝えたら、「こちらで記載しておく」との返答だったとのこと。

はて、国民健康保険の手続きで、私はマイナンバーを記載して、免許証まで見せて、友人は、何も記載せずに済んだ。この違いは何か。後日、所用で役所に行ったついでに聞いてみた。

担当者曰く、「申請書にマイナンバーが記載されていたら、本人確認のために、マイナンバーカードや免許証などの身分を証明するものの提示をお願いしている。記載がなければこちらで調べる。」

なんじゃこりゃと思ったので、「それなら、何のためのマイナンバーか」と聞いてみた。マイナンバーを書いたら身分証明書等が必要で、書かないなら必要ないとは、それじゃ、「書かなかったもん勝ち」の「書いたもん負け」じゃないかと。

「国で、国民健康保険はマイナンバー事務となっているので、皆様にご協力をお願いしている。」という返事。

実際にこのマイナンバーは使っているのか聞いたところ、他市町村から転入してきた者の所得を確認するためには使うとのこと。

私は転入者ではないので、私の申請ではどうやって使うのかと聞いても、あまり要領を得た答えは聞かれなかった。

マイナンバーを使って、「格段に事務の効率化が図られてる」とは見えなかった。もしかすると、記載させて、それで終わりなのかも知れない。意味のないマイナンバー記載?

まあ、国の施策をそのまま実行するのがお役所なので、これ以上は言っても無駄なので、これで引っ込んだ。

本来は、マイナンバーは記載して、これに対して本人確認をするために身分証明書等が必要となることは理解したが、空欄で提出しても何ら問題はないというのは驚きだ。

でも、考えてみると、もしも、マイナンバーの記載が「絶対に必要」となると、マイナンバーを記憶している人など皆無だろうから、役所の事務は100%パンクする。

なので、緊急避難的に記載がなくとも受理することにしていると思う。

なぜ、マイナンバーの記載を必要とするか

そもそも、なぜ、マイナンバーの記載を必要とするかだが、私見では次のようなことと思う。

もともと、税や社会福祉では、マイナンバーなどはなかったが、住民登録の確認により、本人特定をしていたものである。

所得税の確定申告なら、その内容は地方税に波及するため、市町村に送られる。市町村では当然、住民基本台帳と突合して本人を特定する。もしも、住民基本台帳に当人が存在しなければ、その旨、国税局に通知する。こうした流れで、本人を特定している。

それに、マイナンバーが加わったが、マイナンバーで特定するとしても、その番号が住民基本台帳上正しいかどうかは、住民基本台帳にマイナンバーが記載されているので容易に知ることができる。

もともと、マイナンバーがなかった当時は、住民基本台帳のみで本人を特定していたもので、それにマイナンバーが加わった形だ。

行政なら、こうして住民基本台帳で確認できるから良いとして、これが金融機関ならどうだろうか。誤ったマイナンバーが記載されたときに、住民基本台帳で確認することはできない。

なので、ここでは、間違いなく、本人であるかを確認していなければ、番号の正確性は担保されないことになる。

だから、免許証等の身分証明の確認は絶対に必要となる。

このように民間がマイナンバー業務を行うときにはマイナンバーは絶対に必要となるので、本来は、それほど必要のない、行政事務においても、必要としていると推測する。

今でこそ、金融機関でのマイナンバーの提供は任意だが、私見では、将来は必ず、必須となる。そのときの伏線を張っているということだ。

マイナンバーの記載は本当に必要なときのみ求めるべき

国民健康保険、確定申告ともにマイナンバーを必要とする。しかし、実態は、必須ではない。

マイナンバーが絶対に必要と思い、苦労をした人は数多いのではないだろうか。番号がどこにあるかと、わざわざ住民票を取った人もいると思う。

身分証明書がないので、健康保険証等、身分を証明するものを複数枚コピーした人もいるだろう。

でも、実態は、このようにマイナンバーの記載をしなくても、処理してもらえる。

これを不公平と言わずして何というか。

必要なものは、絶対に必要、必要でないものは、絶対に必要ないとしなくてはならない。

「本当は必要なんですけど、なくても、まあ、仕方ないですね~」などという今の対応は絶対に良くない。

ところで、国民健康保険、確定申告では受理してもらえるなら、マイナンバーの記載の必要はないが、会社員が会社から求められた場合は、必ず、書かなくてはならない。なぜなら、会社は税務署から言われているのであって、記載しないと会社内の人間関係を悪くするからだ。

マイナンバーの必要性

国が言及するマイナンバーの目的等は次のとおりである。(内閣府HPより

マイナンバーは、社会保障、税、災害対策の3分野で、複数の機関に存在する個人の情報が同一人の情報であることを確認するために活用されます。

これまでも、例えば、福祉サービスや社会保険料の減免などの対象かどうかを確認するため、国の行政機関や地方公共団体などの間で情報のやりとりがありました。

しかし、それぞれの機関内では、住民票コード、基礎年金番号、健康保険被保険者番号など、それぞれの番号で個人の情報を管理しているため、機関をまたいだ情報のやりとりでは、氏名、住所などでの個人の特定に時間と労力を費やしていました。

社会保障、税、災害対策の3分野について、分野横断的な共通の番号を導入することで、個人の特定を確実かつ迅速に行うことが可能になります。 これにより、行政の効率化、国民の利便性の向上、さらに公平・公正な社会を実現します。

マイナンバーのメリットは、大きく3つあります。 1つめは、行政事務を効率化し、人や財源を行政サービスの向上のために振り向けられることです。

2つめは、社会保障・税に関する行政の手続で添付書類が削減されることやマイナポータルを通じて一人ひとりにあったお知らせを受け取ることができることや、各種行政手続がオンラインでできるようになることなど、国民の利便性が向上することです。

3つめは、所得をこれまでより正確に把握するとともに、きめ細やかな社会保障制度を設計し、公平・公正な社会を実現することです。

どうもいまひとつ必要性が分からない文言だ。どこにも、金融機関での資産把握や脱税防止などとは書かれていない。でも、筆者は絶対にそうだと思っている。