年金受給者のために国は年金財源をこうして確保せよ

少子高齢化で年金の支え手が激減している。このため年金財源が枯渇しそうだ。正確に言うと支え手は少数になるとはいえ存在するので、全く年金がなくなるということはないが年金の受給額が下がるということだ。

今でさえ、年金だけで生活ができないというのにこれ以上、下がったらもうどうしようもない。

かといって、年金制度の構造上、若年者が減ってきたら年金を支える者が減るので財政が厳しくなるというのは自明の理だ。

年金財源の仕組み自体は人口が増加するという前提で作られたもので要は仕組みが悪いといわざるを得ない。

それでは、この仕組みを変えれば良いかというとそうとも言い切れない。仕組みを変えるということは世代間負担を止めて積み立て方式にすることに他ならないからだ。

積み立て方式にしたらどうなるか。貯金と同じなので、今のような高?年金は望めない。

少し見てみよう。全て令和元年の金額であるが、国民年金の掛け金は月16,410円、これを40年間支払うとするとその額は7,876,800円。一方、65歳から支給開始として20年間受給するとすれば、1か月の受給額は64,941円なので、総支給額は15,585,840円となる。

支払ったお金の2倍が戻ってくる計算だ。

いやいやそんな単純なものではない。物価上昇率を考えると20年後だから貨幣価値は半減しているのではないかと考える人もいるかも知れない。

確かにそうだろう。しかし、これは20年のちのどこかの段階でインフレが生じているときに初めて言えることだ。例えば、わが国では1972年ごろからバブル崩壊までは好景気に支えられ一直線で物価は上昇してきた。しかし、バブル崩壊後を見てほし。この20年間は殆ど物価は変わっていない。

だから、これから先、人口減少のなか、貨幣価値が大きく変わることは考えられない。そうした視点で見ると、現在の年金制度はいかに好条件なのかが分かる。

これを積み立て方式にするとどうだろう。7,876,800円は7,876,800円のままだ。まあ、仮に1割もの大盤振る舞いの利息が付くとしても8,664,480円である。現在の15,585,840円と比べると雲泥の差ということが分かる。

積み立て方式の良い点は、自分が積み立てたお金なので、ある程度自由にできる可能性が高いというところだ。貯金と違うので全く自由というわけではないが、例えば余命何年とかの診断が出たときに積み立てた分を払い戻しができるとかは可能だろう。

一方、現在の年金だとそうしたことはできない。それだけでなく、年金受給年齢前に死んでしまえば丸まるの損ということになる。年金の長生きしたときの保険としての性格をこれで如実に表している。年金保険たる所以だ。

さて、仕組みが変えられないことが分かったら、年金をこれ以上減らされないためにはどうすれば良いかだ。何のことはない。年金財源に公費負担を多くすれば良いだけだ。少子高齢者施策で子育て関係に多くの公費が支出されている現在、年金財源にも多くの公費を費やすれば良いだけだ。

ところが国の財源に限りがあり、多額の借金をしている現在、更に年金に充てる財源があるのかということになる。ない袖は振れないのだ。だから、財源を何とかして捻出しなくてはならない。ここからが本題だが、私は年金の財源を今よりも少しでも潤すためには次の施策を行えば良いと思っている。

1 遺族年金の非課税をなくす
遺族年金は課税されない。福祉的視点でそうなっている。だから多大な金額をもらっている人であっても非課税だ。寡婦であっても、そうでなくても需要は変わらないはずなのに寡婦というだけで非課税になる。非課税が非論理的なだけではなく、結婚歴がなくて年金生活になった者と比べると不公平となっている。確かに夫を亡くして可愛そうというのは分かるが、平均寿命を考えると女性の方が長生きだ。だから、夫が先に亡くなるのは、それは普通のことに過ぎない。普通のことに「非課税」という配慮をする必要が果たしてあるのだろうか。もしも非課税にするならば例えば60歳未満とか非課税の対象者を限定すべきと思っている。

2 3号被保険者には負担金を払ってもらう
サラリーマンの妻は3号被保険者となっているが、保険料は支払っていない。支払っていないが国民年金に加入していることとなり、40年間加入すると満額の年金を受給できる。確かに専業主婦の業務量は働いている者と同じで、たまたま収入がないので負担しようがないという考えは分からないでもないが、負担しなくとも年金が受給できるという事実はある。この事実をどうとらえるかだが、やはりいくばくかは負担してもらっても良いのではないか。年金掛け金満額でなくとも、何千円でも良いので夫の社会保険料に加えても良いのではないかと思っている。

3 相続税を増額する
国の財源を充足するには最終的には増税に頼ることとなるが、消費税も増額になったいま、増税ができるものは相続税ぐらいしかないのではないだろうか。というのも相続は言わば「棚ぼた」だからだ。たまたま、親などが財産を持っていたに過ぎない。中には被相続人がその財産形成を助けたということがあるかも知れないが基本は「棚ぼた」と思う。「親の遺産で・・・・」ということを結構聞く。「棚ぼた」であるならば、その恩恵を国がある程度まで享受しても構わないだろう。

異論はあると思う。特に、こうした施策を講じた場合、収入減となる者たちからの反対意見は噴出するものと思う。確かに該当する者たちにとっては死活問題かも知れないが、年金財源という大きな枠を考えた場合はこうすることが一番良いと思っている。

ちなみに、私の妻は3号被保険者、母親は遺族年金で生活している。残念ながら相続するべき財産はないが。