マレーシア旅行記、南国情緒のマレーシア(五日目)

マレーシア旅行記5日目

怪しい運転手

しばらくして1台のタクシーが来た。手を上げるとすぐに止まった。インド系の運転手だ。先ずは値段交渉。

インフォメーションセンターの言うとおり、「1時間RM20で」というと「乗れ」と言ってくる。なんだ値段交渉なんて簡単なものだなと思ったがそれは甘い考えだった。ちょっと走ってから運ちゃんは、「1時間RM30だ」という。なんということだ。さっきRM20でOKしたのではないか。「相場はRM20と聞いている」とか、「さっきOKしたのではないか」とは言ってはみたが、「RM30は高くない、これが相場だ」と言い張る。

実は、RM30はそれほど高くないことは知っていた。クアラルンプールではRM30が基本ということが本に載っていたし、ここイポーでは若干下がるだろうが、RM30がぼっているわけではない。インフォメーションセンターでRM20と聞いたときはちょっと安いのではと思っていたぐらいなので、RM30でOKした。OKした途端、「30分は1時間料金だからな」と畳み込むように言ってきた。何と、金に汚いやつなのだろうか。

定番の質問で「どっから来た」と聞いてきた。失礼なやつなので「どっからだと思う」と聞くと、韓国からかとか、台湾からかとかいう。

程なくしてサンポトンに付いた。サンポトンではこの運ちゃん、サンポトンはここから始まり、ここまである。こんなに広いところなので見るには相当時間がかかると言った。この言葉で、いやな予感がした。

降車の際、俺は「ここで待っててくれ」というが何となく要領を得ない。

「ちょっとあそこで飯食っている」と言い出す。

「いや待っててくれ」というと今度は「車のナンバーを控えておくと間違いないだろう。紙とペンはないか」という。

車なんか数台しか止まっていないし、タクシーは一台もない。なのに、車のナンバーを控えておく必要性はどこにあるのか。とは思ったもののここでやり取りしていてもラチが開かない。仕方ないのでメモしてもらって観光することにした。

15分ほどしてから戻ったが案の定タクシーはどこにもいない。「飯食っている」と言った場所にもいない。

やられた。ここで置いてきぼりを食うとは思ってもいなかった。否、置いてけぼりではない。時間稼ぎだ。適当に時間をかせいでおいて、その時間も料金に含める気だ。とすると、いつ戻ってくるか分かったものではない。30分か、それとも1時間か。これには参った。ぼられることは予想の範囲内だったので、これなら最初からもっとぼってくれた方が良かったと思った。

何れにしてもこの炎天下の中そんなに待つことはできないし、待つ気もしない。

こんなやつに構っていられない。別にタクシーに頼る必要は全くない。自分で帰れば良いだけだ。単純な話だ。ここはイポー市街からたった8キロしか離れていないのだ。

なので、自分で帰ることにした。

外国では兎も角危険を回避しなくてはならない。そのことを先ずは念頭に置いて、真面目そうな人をと思った。

幸運にも、40歳ぐらいの華人が車に乗ろうとしていた。奥さんと小さな子供を連れている。この人たちが強盗に早変わりすることはないだろう。

街中に行くか聞いてみたがこれからクアラルンプールへ戻るので市街には行かないとのこと。バス停があるのでバスで行けば良いと教えてくれた。

そうだ、バスがあった。ついでに、バス停までお願いしてみたが、目と鼻の先にあるので十分歩けるとのこと。

この華人には悪いことをした。突然の変なおじさんにさぞ驚いたことだろう。

バス停まで歩こうとしたところで、向こうから見覚えのあるタクシーがきた。

「何で待っててくれなかったのか。ここはそんなに広くない。さっきここからと言った場所はサンポトンではなくてただのレストランではないか」と大きな声でいうと悪気もなく「買い物をしていた」「これを買っていた。この薬だ。これはプレッシャーに良く効くんだ。」といい見せてくれた。

ん、精神に良く効く薬?え、麻薬?、麻薬なのか・・・・?。そういえば、この運ちゃんの右手には刺青が。怪しい、怪し過ぎる。

走り出そうとしたそのときに不思議な光景を目にした。運ちゃん、窓を開け、通行人に何やら話しかけている。現地語なので何と言っているか分からないが、その通行人は手を振り何やら断っているようだ。想像するに、そっちの方向に行くなら乗ってかないかと言っていたように思う。客が乗っているタクシーに更に人を乗せようとするなんて何と言うやつだ。

ここで観光を全て中止してホテルに戻ってもらっても良かったが、すぐに戻ったところでそこまではこの運ちゃんの世話になることは変わりがない。不思議と恐怖は感じなかったので観光を続けることにした。次はペラトン。

道中、運ちゃん色々と話しかけてくる。先ずは定番の、「安い宿を紹介する」とか「腹は減っていないか」というやつ。宿やレストランを紹介してマージンを取る戦法だ。一通り断ると今度は「日本人は、体を鍛えてると聞いている」と言って来る。喧嘩になったときに強いかどうかの確認なのかと、どうも悪い方向、悪い方向と考えてしまう。「そうさ、みんな鍛えてるさ。もちろん俺もな」と言っておいた。

次は世間話的なもの。この辺は運ちゃんが気を遣ったのだろうか。息子と娘がいて娘は大学に行ってる。マレーシアにはマレー系、中国系、インド系、その他の民族がいてなかなか大変と言いながら、マレー系を快く思っていないのが汲み取れた。

それから、エッチ、エッチと言ってきた。エッチなところでも紹介してマージンをとる気なのかと思っていたら、エイジのことだった。年を聞いていたのだ。そのまま答えたら「俺は何歳に見える」と聞いてきた。35歳ぐらいかと言うと47歳と答える。インド系は肌が黒くて年齢がぜんぜん分からない。若く見えるとお世辞を言っておいたがこの地では若く見られることは良いことなのだろうか。

ペラトンに着いた。「待っててくれよ」と言うと「そこの休憩所にいる」と言った。目と鼻の先だし、さっきのことがあるので今度は大丈夫だろう。もしもいなくとも今度こそバスで帰るだけと思い、観光をした。

戻ると今度はちゃんとそこに居た。僕を見つけると、手を上げて合図をしてきて、「全部見たかい」と気を遣うそぶりも見せた。

帰る車中、この運ちゃん、何やら飲んでいる。瓶を見ると酒瓶だ。さすがに何を飲んでるのかとは聞けなかった。

車中、さて、いくら請求されるのかと思っていたが不思議と安心感があった。そのひとつの根拠が、正しい道を通っているということ。知らない街でどこが正しい道かどうかと聞かれても、感覚的にそうに違いないと思っていた。ホテルまできちんと送ってくれたら、何かあるとホテルに逃げ込めば良いとも思っていた。

ホテルに着いた。丁度、1時間と40分。RM60(1700円ほど)のはずだ。運賃を聞いて吹っかけられてもいやなので、そのままRM60を渡した今日は市内観光の予定。先ら、運ちゃん、にっこり笑って握手を求めてくる。ぼらない。安心したので、さっきまで思っていた疑問を聞いてみた。

「さっきの薬は合法的なものなのか」

「もちろんさ、心臓病の持病があってね。」

プレッシャーと言っていたのはどうも血圧のことだったらしい。 酒瓶からは酒の匂いはしなかった。

もしかするとこの運ちゃんは良いやつだったのかも知れない。

 

イポー二日目

今日は市内観光の予定。先ず、ホテルから、市の中心部への観光。その後、サンポトン、ペラトンの郊外寺院を観光することにしていた。

フロントでバスツアーはないか聞いたが、そのようなツアーはないとのこと。地球の歩き方にもバスかタクシー利用となっている。

朝、9時頃にホテルを出て、徒歩で中心部へ向かった。ところが、ここでも兎も角歩けない。交差点を渡れない。また、方角が分からない。何とか、地図上の位置を見つけ、ツアーインフォメーションセンターまでたどり着いた。

ここで、色々と情報を仕入れた。先ず、イポーでは観光バスはなく、寺院等を回るのは、バスかタクシーを利用するしか方法はなく、タクシーの利用を勧める。チャーターは1時間RM20前後で、所要時間は見る人によるが、ただ単純に回るだけでも1時間はかかるだろうとのこと。親切にも翌日のクアラルンプールまでのマレー鉄道の出発時間まで教えてもらった。

観光バスがないということは、やはり、マレーシアの観光はクアラルンプールが主であり、失礼だがこのような田舎町へはあまり観光客が来ないということなのだろう。来場者は国籍と名前を書くことになっているので、僕もサインをしたが、日本人は1週間に一人来るかどうかだった。まあ、そんなものだろう。

ここでも「てりまかしー」と言ってみたら、即座に、おそらく現地語の「どういたしまして」的な言葉が返ってきた。やはり現地語での挨拶は効果的だ。

イポー鉄道駅
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ツアーインフォメーションセンターからほどなく進むとイポー鉄道駅がある。格調高い立派な作りだがそれほど混雑はしていない。

窓口
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1箇所のカウンターしか空いておらず、銀行の窓口のように整理券を受け取り、番号を呼ばれてようやく切符を購入できる仕組みになっている。出発時間ぎりぎり来たら絶対乗車できないと思う。ここで、翌日のクアラルンプールまでの切符を予め購入しておいた。

寺院めぐりは恐らく2時間ぐらいしかかからないだろう。寺院めぐりを終えたらそのままホテルに戻りたい。街中に戻って再度ホテルまで歩くのはごめんだ。あまり早くホテルに戻ってもどうしょうもないので、寺院めぐりは、この界隈を見てからにしようと思い、ブラブラ歩き始めた。しかし、しばらく歩くと全く方角が分からなくなってしまった。寺院めぐりのタクシーはタクシーステーションから乗車しようと思っていたが、背に腹は代えられない。流しのタクシーを拾うことにした。