
生活保護受給者でもクレジットカードを使うことはできる。ただし、生活保護でクレジットカードのキャッシング機能を利用することは認められない。高額商品購入の場合も要注意である。
政府は消費税増額と合わせて、クレジットカード等のキャッシュレス決済時にポイント還元を行うことを表明した。我々庶民としてはありがたいことだが、ところで、生活保護を受けている者がクレジットカードを使うことに問題はないのだろうか。
巷では、生活保護受給者はクレジットカードが作れないとする意見、問題なく使えるという意見ともにあり、さてどちらなのかと迷うところだ。また、生活保護でクレジットカードを使ってしまった場合の対応や、福祉事務所による生活保護のクレジットカード調査の実態についても不安を持つ方が多い。
そこで、生活保護とクレジットカードの関係について、取扱いを再確認してみた。
生活保護で借金はどのように扱われるか ・ カードローンとの関係
生活保護では最低生活を保障し、最低生活を送ることができる金品を支給している。収入がある場合は当然に最低生活に充当することが求められ、その分だけ保護費が減額されるものである。
さて、その収入について、借金が原資であった場合はどうなるのであろうか。これは生活保護とカードローンの関係を考える上でも重要な論点である。返済を前提とするものであり、返済してしまえばプラスマイナスゼロであるから、収入には該当しないとなるのだろうか。
このあたりについて、少々判例を見てみると、平成20年2月4日付、地裁の判決で次のように例示している。
「その利用し得る資産、能力その他あらゆるもの」及び同法8条1項にいう「その者の金銭又は物品」とは、被保護者が、その最低限度の生活を維持するために活用することができる一切の財産的価値を有するものを含むと解される。
(2)ア そして、生活保護法は「その利用し得る資産、能力その他あらゆるもの」及び「その者の金銭又は物品」について特に限定をしておらず、将来返済が予定されている借入金についても、当該借入れによって、被保護者の最低限度の生活を維持するために活用可能な資産は増加するのであるから、保護受給中に被保護者が借入れをした場合、これを原則として収入認定の対象とすべきである。
(中略)、被保護者が、保護受給中に借入れをした場合、それが将来返済を予定しているものであっても、被保護者が活用可能な資産は増加していることは明らかであり、これを収入認定の対象とすることは不合理とはいえない。
(中略)、保護受給中に多額の借入れをし、その最低限度の生活を維持するのに必要な資産以上のものを有するに至った者に対し、当該借入金を収入として一切考慮しないことになれば、保護の補足性の観点からすれば、かえって不合理な結果となるというべきである。
説明の必要はないと思うが、兎も角、将来的に返済するとしても、お金はお金、今あるのなら、それを生活費としなくてはならないと断言している。これは生活保護でカードローンを利用することが認められない理由の根拠となっている。
これは当然だ。借金を収入として認定しないとすると、何の収入であれ「これは借金」のひとことで、認定除外されてしまうことになる。実務的に見ても、借金は収入として認定されうるべきものであることに間違いない。
クレジットで物品を購入した場合の扱い
ところで、これが借金でなく、クレジットで物品を購入した場合はどうなるであろうか。同判決では次のように述べている。
イ また、クレジットを利用した購入物品についても、将来、立替金の弁済が予定されているとはいえ、借入金同様、被保護者が活用可能な資産が増加することに変わりはなく、他方、上記物品を一切収入と認めないのであれば、前記アと同様の不合理な結果となることは明らかであるから、これらを収入認定の対象とすべきではないとの原告の主張は採用できない。
クレジットで物を買った場合であっても、資産が増えるのだから、補足性の原理で収入認定せよと言っている。100円の物を買った場合、100円相当分だけ資産が増えるのだから、同額を収入認定するべきとのことである。ただし、これには同意できない。
生活保護受給者がクレジットカードで物を購入して良い理由
都合の良い部分だけを抜き出すという訳ではないが、現金を生活保護でクレジットカードのキャッシング機能を使って借金した場合は、判例の示すとおりであろう。
しかしながら、物品を購入した場合までこの原則を貫くのは理解しがたい。
クレジット決済が当然の時代となっている
物を買ったから資産が増えたと同時にタイムラグが若干あるもののお金という資産は減少することに間違いがない。このタイムラグが悪いというなら、支払システムの関係でタイムラグが生じているだけだ。
そもそも、この判例は10年前のものであり、今ほどキャッシュレスの利用が高かったとは言えない当時のことだ。現在は、あくまでも支払手段として生活保護受給者がクレジットカードを利用している。お金の代わりとしてシステム的な支払をしているに過ぎない。そのシステムの利用で支払いの円滑化、記録・集計が容易になるなど大きなメリットを全ての人々が享受している。国においてもキャッシュレスを推進しているところである。
そうしたなか、生活保護を受けている者だけがクレジットカードを使うことでデメリットが生じて良いはずがない。
現金と物とでは資産としての性格が異なる
そうした時代的背景以外に、現金と物とでは資産としての性格が異なることに着目すべきである。
すなわち、借金を収入認定の根拠とするのは、お金は今後の最低限度の生活に自由に利用できるからに他ならない。他方、物は、その物の使用収益という意味においてのみ最低生活に利用できるという、ごく制限された価値である。その意味で現金と物とでは資産としての性格が異なるということだ。
具体的に言うと、10万円のお金を借金したとすると、この10万円は以降、10万円の価値で使うことができるから、10万円の収入認定が可能となる。
しかし、例えば10万円のテレビを購入したとすると、物として使用収益が可能であるだけで、そのテレビが10万円の現金と等価になると考えるには無理がある。換金したとすると確かにそうなるかも知れないが、当然に換金を予定するものではなく、単に使用収益を予定するだけに止まるからである。使用収益を10万円の価値と見るかも知れないがそれはあくまでも今後の使用によって生まれてくる価値であり、潜在的な価値に過ぎない。この潜在的な価値は価値が顕在化されるまで収入認定を行うべきではない。その物の保有が認められるなら、使用収益がすなわち収入認定になるべきものではないということだ。
開始時の資産認定における違い
生活保護の開始時を例に取ると分かりやすい。開始時に20万円の借金を原資とする現金があった場合と換金価値換算で20万円分の今後クレジットで返済する家具什器があったとしよう。前者は手持ち金認定の金額として収入認定の対象とするが、後者を収入認定することはない。
現物による贈与を受けた場合との比較も重要だ。現物贈与を収入として認定するのは、主食、野菜又は魚介に限られ、嗜好品、被服、衛生用品、家具什器、燃料などは収入認定しない。現物贈与を収入認定しないのに、後の返済を予定している現物を収入認定する道理はない。
ただし、保有を認められないものについてはこの限りではないことは言うまでもない。保有を認められない以上、使用収益は認められず、当然に換金を予定するべきものであるからだ。
生活保護でクレジットカードが作れる条件と作れない理由
生活保護受給者がクレジットカードを新規に作成しようとする場合、審査に通らないケースが多いのが実情である。これは生活保護受給者がクレジットカードが作れない主な理由として、安定した収入がないと判断されるためである。
クレジットカード会社は申込者の返済能力を審査する際、収入の安定性を重視する。生活保護費は収入として認められるが、その性質上、カード会社からは継続的な返済能力に疑問符がつけられることが多い。
ただし、生活保護受給前から保有しているクレジットカードについては、解約を強制されることは原則としてない。既存のカードを持ち続けることは可能であり、適切に利用する分には問題ない。
生活保護でクレジットカードを使ってしまった場合の対処法
もし生活保護受給中に不適切な方法でクレジットカードを使ってしまった場合、どのように対処すべきだろうか。
特に問題となるのは、キャッシング機能を使ってしまった場合や、高額な物品を購入してしまった場合である。このような場合、速やかに福祉事務所のケースワーカーに相談することが重要である。
隠蔽しようとすると、後に生活保護不正受給として扱われる可能性があり、事態はより深刻化する。早期に相談し、適切な対応を取ることで、問題を最小限に抑えることができる。
返済計画を立て、保護費の範囲内で返済していくことになるが、生活が困窮する場合は分割返済などの相談も可能である。
ただし、クレジットで購入できるのは生活必需品のみ
保有を認められないものは購入できないのは当然だが、保有を認められるものであってもぜいたく品であったり必要性が乏しいものであれば購入が認められない場合もある。つまり、生活保護受給中にクレジットで購入できるのは生活必需品のみであることに注意をしなくてはならないということだ。これは、クレジットの利用どうのこうのという理屈ではなく、生活保護法第60条から導き出される道理である。
生活上の義務と支出の節約
(生活上の義務)
第六〇条 被保護者は、常に、能力に応じて勤労に励み、自ら、健康の保持及び増進に努め、収入、支出その他生計の状況を適切に把握するとともに支出の節約を図り、その他生活の維持及び向上に努めなければならない。
このように、支出の節約を図らなくてはならない義務があるから、必要性が認められない高価な物の購入には疑問符が付くのである。しかし、何が良くて何が悪いかの各論は当然のことながら出てはくる。1万円の宝石が良くて10万円の宝石がダメなのか。宝石自体を買ってはいけないのか。これらは、クレジットの利用という観点ではなく、生活保護の支出全般についての議論となるのでここでは言及しないが、大前提として受け取った保護費をどのように使うかはある程度は被保護者の自由裁量に任されるべきとも言えることから、難しい問題が内在していることではある。
何れにしても、普通の買い物を生活保護受給中にクレジットカードでしている分には大丈夫ということだ。
生活保護のクレジットカード調査 ・ 福祉事務所にばれるのか
我々の生活でも月末は大分厳しくなることがある。常日頃の支出のチェックがおざなりになっているからだ。同じように被保護者に取っても、自分がどのような支出をしているかは、100%把握はできていないだろう。そうであるなら、福祉事務所はどの程度被保護者個人個人のお金の流れを把握できるのだろうか。自分のことでさえ分からないのに他人がどこまで分かるかということだ。
通常の利用では調査対象とならない
生活保護でクレジットカードを使ったら福祉事務所に連絡が行くことはないだろう。そもそも、保護を受けているという情報自体が高度の個人情報であることを考えるとそのような情報を福祉事務所がカード会社に漏らすはずはない。ということを考えると、いちいち、クレジットの情報を福祉事務所が把握するということは考えづらい。
だから、どのようなお金の使い方をしても大丈夫というわけではなく、支出の節約を図らなくてはならないのは前項のとおりである。
調査が入るケースとは
それでは、どのような場合に生活保護のクレジットカード調査が実施されるのかと考えると、それは生活保護不正受給の疑いがあって福祉事務所が調査をしたときではないかと思う。
生活保護不正受給が疑われる場合、福祉事務所は銀行口座やクレジットカードの利用履歴を調査する権限を持っている。この調査によって、隠していた収入や不適切な支出が発覚することがある。
なので、生活保護不正受給は当然のことながらしてはならないということだ。
生活保護とクレジットカード解約について
生活保護を受給することになった際、既存のクレジットカードを解約する必要があるのかという質問をよく受ける。
解約は必須ではない
結論から言えば、生活保護でクレジットカードの解約を強制されることは原則としてない。ただし、キャッシング機能がついている場合は、その機能を停止することを求められる可能性がある。
生活保護でクレジットカードのキャッシング機能を使うことは認められないため、誤って使用してしまうリスクを避けるために、機能停止や解約を検討することは賢明である。
解約を検討すべきケース
以下のような場合は、生活保護とクレジットカードの関係を見直し、解約を検討すべきである。
・ 年会費が発生するカードで、その費用が家計を圧迫する場合
・ キャッシング枠が設定されており、誤使用のリスクがある場合
・ 複数枚のカードを保有しており、管理が煩雑になっている場合
・ リボ払いなどの残債があり、返済が困難な場合
これらのケースでは、福祉事務所のケースワーカーに相談し、適切な対応を取ることが推奨される。
生活保護とカードローンの関係
生活保護受給中にカードローンを利用することは、前述の判例からも明らかなように、認められない。カードローンで借り入れた金額は収入として認定され、その分の保護費が減額される。
さらに、カードローンの返済は保護費から行うことになり、最低生活費を下回る可能性がある。これは生活保護制度の趣旨に反するため、生活保護とカードローンの併用は避けなければならない。
もし生活保護受給前からカードローンの債務がある場合は、債務整理を検討し、福祉事務所に相談することが必要である。
まとめ ・ 生活保護とクレジットカードの適切な付き合い方
生活保護受給者でもクレジットカードを適切に使うことは可能である。ただし、以下の点に注意が必要だ。
1. 生活保護でクレジットカードのキャッシング機能は使用禁止
2. 購入できるのは生活必需品のみ
3. 高額商品の購入は避ける
4. 生活保護でクレジットカードを使ってしまった場合は速やかに相談
5. 生活保護不正受給と疑われないよう適切に利用する
6. 生活保護のクレジットカード調査が入る可能性を認識する
7. 必要に応じて生活保護でクレジットカードの解約を検討する
生活保護受給者がクレジットカードが作れないケースは多いが、既存のカードは適切に利用できる。キャッシュレス社会において、生活保護受給者も決済手段としてクレジットカードを活用することは、生活の質を向上させる上で有益である。
ただし、支出の節約義務を忘れず、計画的な利用を心がけることが重要である。不明点があれば、必ず福祉事務所のケースワーカーに相談し、適切な助言を受けることをお勧めする。
要旨
生活保護受給者でもクレジットカードを使うことはできる。
ただし、キャッシングはダメ。高額商品購入の場合も要注意。
政府は来年の消費税増額と合わせて、クレジットカード等のキャッシュレス決裁時にポイント還元を行うことを表明した。我々庶民としてはありがたいことだが、ところで、生活保護を受けている者がクレジットカードを使うことに問題はないのだろうか。
巷では、ダメとする意見、良いという意見ともにあり、さてどちらなのかと迷うところだ。
そこで、取扱いを再確認してみた。
生活保護で借金はどのように扱われるか
生活保護では最低生活を保障し、最低生活を送ることができる金品を支給している。収入がある場合は当然に最低生活に充当することが求められ、その分だけ保護費が減額されるものである。
さて、その収入について、借金が原資であった場合はどうなのであろうか。
返済を前提とするものであり、返済してしまえばプラスマイナスゼロであるから、収入には該当しないとなるのだろうか。
このあたりについて、少々判例を見てみると、平成20年2月4日付、地裁の判決で次のように例示している。
「その利用し得る資産,能力その他あらゆるもの」及び同法8条1項にいう「その者の金銭又は物品」とは,被保護者が,その最低 限度の生活を維持するために活用することができる一切の財産的価値を有す るものを含むと解される。
(2)ア そして,生活保護法は 「その利用し得る資産,能力その他あらゆる,もの」及び「その者の金銭又は物品」について特に限定をしておらず, 将来返済が予定されている借入金についても,当該借入れによって,被保護者の最低限度の生活を維持するために活用可能な資産は増加するのであるから,保護受給中に被保護者が借入れをした場合,これを原則として収入認定の対象とすべきである。(中略),被保護者が,保護受給中に借入れをした場合,それが将来返済を予定しているものであっても,被保護者が活用可能な資産は増加していることは明らかであり,これを収入認定の対象とすることは不合理とはいえない。
(中略),保護受給中に多額の借入れをし,その最低限度の生活を維持するのに必要な資産以上のものを有するに至った者に対し,当該借入金を収入として一切考慮しないことになれば,保護の補足性の観点からすれば,かえって不合理な結果となるというべきである。
説明の必要はないと思うが、兎も角、将来的に返済するとしても、お金はお金、今あるのなら、それを生活費としなくてはならないと断言している。
これは当然だ。借金を収入として認定しないとすると、何の収入であれ「これは借金」のひとことで、認定除外されてしまうことになる。実務的に見ても、借金は収入として認定されうるべきものであることに間違いない。
ところで、これが借金でなく、クレジットで物品を購入した場合はどうなるであろうか。
同判決では次のように述べている。
イ また,クレジットを利用した購入物品についても,将来,立替金の弁済が予定されているとはいえ,借入金同様,被保護者が活用可能な資産が増加することに変わりはなく,他方,上記物品を一切収入と認めないのであれば,前記アと同様の不合理な結果となることは明らかであるから,これらを収入認定の対象とすべきではないとの原告の主張は採用で きない。
クレジットで物を買った場合であっても、資産が増えるのだから、補足性の原理で収入認定せよと言っている。100円の物を買った場合、100円相当分だけ資産が増えるのだから、同額を収入認定するべきとのことである。ただし、これには同意できない。
生活保護受給者がクレジットで物を購入して良い理由
都合の良い部分だけを抜き出すという訳ではないが、現金をクレジットカードで借金した場合は、判例の示すとおりであろう。
しかしながら、物品を購入した場合までこの原則を貫くのは理解しがたい。
★クレジット決済が当然の時代となっている
物を買ったから資産が増えたと同時にタイムラグが若干あるもののお金という資産は減少することに間違いがない。このタイムラグが悪いというなら、支払システムの関係でタイムラグが生じているだけだ。
そもそも、この判例は10年前のものであり、今ほどキャッシュレスの利用が高かったとは言えない当時のことだ。現在は、あくまでも支払手段としてクレジットカードを利用している。お金の代わりとしてシステム的な支払をしているに過ぎない。そのシステムの利用で支払いの円滑化、記録・集計が容易になるなど大きなメリットを全ての人々が享受している。国においてもキャッシュレスを推進しているところである。
そうしたなか、生活保護を受けている者だけがクレジットカードを使うことでデメリットが生じて良いはずがない。
★現金と物とでは資産としての性格が異なる
そうした時代的背景以外に、現金と物とでは資産としての性格が異なることに着目すべきである。
すなわち、借金を収入認定の根拠とするのは、お金は今後の最低限度の生活に自由に利用できるからに他ならない。他方、物は、その物の使用収益という意味においてのみ最低生活に利用できるという、ごく制限された価値である。その意味で現金と物とでは資産としての性格が異なるということだ。
具体的に言うと、10万円のお金を借金したとすると、この10万円は以降、10万円の価値で使うことができるから、10万円の収入認定が可能となる。
しかし、例えば10万円のテレビを購入したとすると、物として使用収益が可能であるだけで、そのテレビが10万円の現金と等価になると考えるには無理がある。換金したとすると確かにそうなるかも知れないが、当然に換金を予定するものではなく、単に使用収益を予定するだけに止まるからである。使用収益を10万円の価値と見るかも知れないがそれはあくまでも今後の使用によって生まれてくる価値であり、潜在的な価値に過ぎない。この潜在的な価値は価値が顕在化されるまで収入認定を行うべきではない。その物の保有が認められるなら、使用収益がすなわち収入認定になるべきものではないということだ。
生活保護の開始時を例に取ると分かりやすい。開始時に20万円の借金を原資とする現金があった場合と換金価値換算で20万円分の今後クレジットで返済する家具什器があったとしよう。前者は手持ち金認定の金額として収入認定の対象とするが、後者を収入認定することはない。
現物による贈与を受けた場合との比較も重要だ。現物贈与を収入として認定するのは、主食、野菜又は魚介に限られ、嗜好品、被服、衛生用品、家具什器、燃料などは収入認定しない。現物贈与を収入認定しないのに、後の返済を予定している現物を収入認定する道理はない。
ただし、保有を認められないものについてはこの限りではないことは言うまでもない。保有を認められない以上、使用収益は認められず、当然に換金を予定するべきものであるからだ。
ただし、クレジットで購入できるのは生活必需品のみ
保有を認められないものは購入できないのは当然だが、保有を認められるものであってもぜいたく品であったり必要性が乏しいものであれば購入が認められない場合もある。つまり、クレジットで購入できるのは生活必需品のみであることに注意をしなくてはならないということだ。これは、クレジットの利用どうのこうのという理屈ではなく、生活保護法第60条から導き出される道理である。
(生活上の義務)
第六〇条 被保護者は、常に、能力に応じて勤労に励み、自ら、健康の保持及び増進に努め、収入、支出その他生計の状況を適切に把握するとともに支出の節約を図り、その他生活の維持及び向上に努めなければならない。
このように、支出の節約を図らなくてはならない義務があるから、必要性が認められない高価な物の購入には疑問附が付くのである。しかし、何が良くて何が悪いかの各論は当然のことながら出てはくる。1万円の宝石が良くて10万円の宝石がダメなのか。宝石自体を買ってはいけないのか。これらは、クレジットの利用という観点ではなく、生活保護の支出全般についての議論となるのでここでは言及しないが、大前提として受け取った保護費をどのように使うかはある程度は被保護者の自由裁量に任されるべきとも言えることから、難しい問題が内在していることではある。
何れにしても、普通の買い物をクレジットでしている分には大丈夫ということだ。
そもそもクレジットの利用は福祉事務所にばれるのか
我々の生活でも月末は大分厳しくなることがある。常日頃の支出のチェックがおざなりになっているからだ。同じように被保護者に取っても、自分がどのような支出をしているかは、100%把握はできていないだろう。そうであるなら、福祉事務所はどの程度被保護者個人個人のお金の流れを把握できるのだろうか。自分のことでさえ分からないのに他人がどこまで分かるかということだ。
クレジットカードを使ったら福祉事務所に連絡が行くことはないだろう。そもそも、保護を受けているという情報自体が高度の個人情報であることを考えるとそのような情報を福祉事務所がカード会社に漏らすはずはない。ということを考えると、いちいち、クレジットの情報を福祉事務所が把握するということは考えづらい。
だから、どのようなお金の使い方をしても大丈夫というわけではなく、支出の節約を図らなくてはならないのは前項のとおりである。
それでは、どのような場合にばれるのかと考えると、それは不正受給等をして福祉事務所が調査をしたときではないかと思う。
なので、不正受給は当然のことながらしてはならないということだ。